ひねもす大学から学ぶ楽しさを!代表 太刀川さんの教育観に迫る

新潟県長岡市にある「ひねもす大学」を立ち上げた太刀川晋平さんは、大手学習塾に22年間勤務し、多くの子どもたちや保護者と向き合ってきました。

科目や指導形態など一通りの教育の形を経験し、その中で自らの理想の教育を見つけた太刀川さん。この「ひねもす大学」で、その理想を実現しようとしています。

なんのために、そこまで全身全霊で子どもたちの未来に尽くすのか、太刀川さんが大切にしている教育観に迫りました。

太刀川 晋平さん Tachikawa Shinpei

大手学習塾に22年間勤務。多くの子どもたちや保護者と向き合う。小学生・中学生・高校生、科目や指導形態も含め、一通りの教育のカタチを経験。その中で、教育に対する理想が固まり独立。ひねもす大学を2023年4月に開校する。

 

自由に大きく学ぶ「ひねもす大学」とは

新潟県長岡市にて開校された「ひねもす大学」には、学校や塾にはほとんどと言っていいほど設置されている黒板やサテライト機材、オリジナル教材やプリントが山積された事務室などはありません。
あるのはロッカー、机、椅子、そして素敵な観葉植物たちだけ。

「ひねもす大学」の「ひねもす」は「一日中」。そして「大学」とは、高等学校よりも上の学校という意味ではなく「大きく、学ぶ」という意味があります。

必要なのはテストの点数だけでなく、既にあるものに疑問を持ち、書き換えるために学んでいく力。
大人になってもずっと続く個人的な活動、それが”学ぶこと”。
学ぶ楽しさ、知る楽しさを経験しながら学ぶ力を身に付ける教育をめざすのが、「ひねもす大学」です。

太刀川さんが講師となり、一人一人の個性に合わせた指導により勉強の習慣化をサポートしている他、様々なオトナや学びに出会える特別授業「HINEMOS CLASS」「HINEMOS TALK」も開催しています。

ひねもす大学で目指す教育

ーー22年間、大手学習塾で小学生〜高校生まで学年問わず生徒や保護者から人気の塾講師であった太刀川さん。どうして所属していた塾から独立して、「ひねもす大学」を立ち上げたのでしょうか?

太刀川晋平さん:自分が提供したい教育を展開していくためです。
僕が30歳になった頃から教育現場に感じていたことを、ずっと塾講師をしながら少しずつ探究していたんですが、それを形にしようと思ったタイミングが来たので、2023年に独立することにしました。

ーー太刀川さんが教育現場にいながら感じていたこととは何でしょうか?

太刀川晋平さん:「高得点」「進学校」を作ろうとする方針への違和感だったり、自分自身を含めた先生たちの進路指導にリアルさがないような、弱みを感じるようになったんです。子どもたちに寄り添えていないような。

一人一人の状況や個性をきちんと見て、次の目標を設定して、それを一つずつ乗り越えることで、成功体験を積み重ねてもらう。そして、次につながる意欲をつくる。子どもたちに提供すべき教育とは、そういうことなのではないかなと。クラスでの指導のような大人数への目線ではなく、小さな一人一人の規模で見ていくことが必要だと感じたんです。

一方で、時代はちょうど日本にFacebookが入ってきた頃。
普通に過ごしていたら出会えないような各地域・各領域のトップランナーたちに直接コンタクトをとることができるサービスと初めて対面した私は、これはいい!と早々に飛びつきました。
そして「塾講師をしている者ですが、進路について学びたいので、あなたの生き方についてお話を聞かせていただけませんか?」と、DMを送りはじめたんです。

ーー様々なトップランナーとつながることは、その後どんな活動につながっていったのでしょうか?

太刀川晋平さん:様々なプロフェッショナルの方々に、実際に話を聞いてみると、様々な生き方や広い価値観を直接見ることができました。
Webでその議事録を残していましたが、見えない相手に発信するのではなく、目の前の人に届けるべきだとイベントを企画したんです。
すると、過去の教え子や長岡で新しいことをしようとしている方々が協力し始めてくれて、賛同者がどんどん増えていきました。
そんな経緯から始まったイベントの一つが、GOOD LUCK COFFEEの「ME TALKING ABOUT ME‼︎ ~ 私について話します。~」です。
プロフェッショナルの方の「今」と「これまで」「これから」を聞くというトーク形式のこのイベントはひねもす大学の学びとも大いに結びついており、現在も開催しています。

ーー太刀川さんご自身は、様々な人に出会っていく中でどんな気づきがあったのでしょうか?

太刀川晋平さん:たくさんの方々と出会ってお話をさせてもらう中で、僕が素敵な大人だと感じたのは、”何かを欲している人”でした。あれがしたい、あの場所に行きたい、あれが欲しいとか。皆さん話すとき、目がキラキラしているんですよね。
それに気づいたとき、テストや受験対策をただ効率的に行うのではなく、それ以外のことも含めた学ぶ楽しさ、知る楽しさを経験できる教育、意欲が湧き出るクセを作る教育がしたいと思ったんです。

勉強が得意な子は、成績が良く、塾や家庭で褒められます。逆に自信がない子は、目に見える形で評価されにくく、なかなか自分を肯定できない。ただ、5教科の勉強が苦手でも、その他の特性や能力は必ずあります。
子どもの能力は成績表だけでは測れません。それを実際に輝いている大人たちに出会ったことで実感しました。

 

ひねもす大学の授業スタイル

ーー自分の理想とする教育を実行するにあたって、大切にしていることはどんなことですか?

太刀川晋平さん:子供たちと本音で向き合うことです。時には言われたくないことも言ってあげないといけないと思っています。

教科を教えることが講師の役割ではあるのですが、それは”最も重要なこと”ではありません。
勉強は多くの子どもたちにとっては、面倒くさくて嫌なものでしょう。嫌なものだからこそ、勉強と向き合うことで、逃げてしまったり、ごまかしたり、止まってしまったりといった性格が出やすいです。

講師に重要なことは、その一人一人の性格に向き合ってあげることだと考えています。それには、講師との信頼関係は必要不可欠です。

ーー「面倒で嫌なものだからこそ分かる子どもたちの性格と向き合う」とは、具体的にどういうことでしょうか?

太刀川晋平さん:例えば、答えを写して勉強したフリをするとか、間違えているのに丸をつけて課題を完了させたりとか、ノートを見ると一目でわかります。これって実は結構多いのが現状で、その際に即反応して、子どもに問い詰めることができるかが大切です。

「ひねもす大学」では、子どもたちそれぞれにスケジュールシートがあるので、僕が子どもたちの今日やることを管理したり、ノートやテストを見たり、一人一人違った対応をとります。
画一的な指導マニュアルなどはなく、基本は個人と個人のぶつかり合いです。

「テストに出るからやっておくといいよ」ではなく、教材を最大限使うために、どうしたらいいのかを子どもたちと話します。
教材の工夫も読み取れるようになるので、誰かが導いてやらなくても、自ら学ぶ子になれる。大人になっても使える”学ぶ力”を身に付けることが大事だと思っています。

ひねもす大学のこれから

ーー最後に、太刀川さんの未来の展望を教えてください。

太刀川晋平さん:教育の視点をアップデートしていくことに貢献できたらいいなと思っています。
でも、そんなに大それたことはできませんので、まず、ひねもす大学を利用してくれている子どもたちに、自分の最大の力を発揮したいです。その上で、少しでも多くの方にひねもす大学の教育を評価してもらえたら嬉しいですね。
そのためにも、自分がこの場所を守り続けていく必要があります。

それに加えて、「HINEMOS CLASS」「HINEMOS TALK」のような、プロフェッショナルを招いて生き方やその人生を伝える授業には、これからも力を注いでいこうと思います。
この授業に関しても、テンプレートやマニュアルが存在し得ないんです。だからこそ、私自身もプロフェッショナルの方と一緒に子どもたちへの授業を構成していくことに大きなやりがいを感じています。

いつか、ひねもす大学を卒業した子が「あの時、あの人に出会って人生が変わった」なんて感じてくれたら、最高ですね。

 

 

● 所在地
〒940-2112 新潟県長岡市大島本町1丁目8-11


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(取材・編集校正:ayaka 執筆:ひな)