フラー会長、渋谷修太さんに「新潟ベンチャーの可能性と若者に届けたいメッセージ」を聞いてきました!

渋谷修太さん

今回は、フラー株式会社の会長、渋谷修太さんに新潟県におけるベンチャー業界の可能性や若手育成で大切にしていきたいことを伺ってきました。

働き方やキャリアの描き方は、時代と共に加速度的に”変化”しています。
社会への扉を前にしている学生たちの中には、時代の変化を体感しつつも、その方向や具体がよく分からず、漠然と焦りや不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

そして、実は学生たち以上に、保護者の方がもっと漠然とした不安を感じているかもしれません。

この記事では、その”変化”の一端である「ベンチャー企業」や「起業」に関して、フラー株式会社の渋谷修太さんに語っていただきました。

新潟での就活、ベンチャー企業に注目した方がいい理由とは

新潟市の風景

 

ー近年の新潟において、ベンチャー企業の規模拡大が目覚ましいと感じているのですが、渋谷さんの視点にはどう映っているのでしょうか。

渋谷修太さん:僕が会社を作った10年前に比べると、新潟の起業環境やベンチャー進出はここ数年で大きく変わりました。

約2年半前に新潟に戻ってきた頃、若い起業家を集めて合宿を企画したところ、4・5人くらいしか集まらなかったんです。それが今年は30〜40人近くの起業家が集まり、周囲だけでも起業家の数は10倍くらいに増えています。
学生起業家や、新潟に拠点を移してきた起業家など様々ですが、これはまさに新潟の環境が整ってきたことの現れなんだと思っています。

フラーも2017年に新潟オフィスを作って以来、新潟大学や長岡技術科学大学、長岡造形大学、長岡高専などから学生がインターンシップに来てくれるようになりました。若いうちからベンチャー企業に触れる環境や感覚も、新潟で築かれつつあるのだと感じます。             

新潟の若手起業家たちと渋谷修太さん

ー学生のインターンシップ先として、渋谷さんはベンチャー企業をどのくらい推していますか。

渋谷修太さん:僕の中ではベンチャー企業の一択だと思っています。
理由は3つあり、まずベンチャー企業は組織規模が小さいことも多いので、会社全体を見る事ができます。経営者や各部門の仕事を見れるのはすごくいい事ですよね。大企業では、どうしても経験が未熟なうちは会社の限られた部分しか見ることができません。早くから会社全体を見ることができれば、自分自身のこともより客観的に全体視点で見ることができます。それが、次のキャリアアップなどに活かされるかもしれません。

もう1つとして、ベンチャー企業は、成熟した企業に比べて会社自体がまだ整っていない状況なので、いろんな業務に携わることができるという利点があります。つまり、チャンスがたくさんあります。
学生インターンでも裁量権を持てたり、チャレンジングな仕事を与えてもらえる可能性が大いにあります。

そして最後に、個人的な経験から伝えたいこととして、会社が成長している時期に身を置くのは非常に大事だということです。世の中の99%の会社は、成長過程でいうと「安定」か「右肩下がり」なんです。そんな中で会社が成長して大きくなる時期を経験でき、その価値観を得られることは何よりの財産ですよね。

 

ー渋谷さんが会長を務めるフラーではどのような採用をされているのでしょうか。

渋谷修太さん:フラーでは、「フラーの進みたい道とその人の歩みたい道の方向がそろっているか」「一緒にいることで双方にとって良い未来が描けるか」を大事にしています。そういった意味で、ミスマッチがないよう相性を重要視しているかと思います。

 

ー内定を決める時、どんなことを重視していますか?

渋谷修太さん:フラーは職種ごとの既存メンバーに、採用したい人を決めてもらっています。
5年くらい前でしたら採用は僕1人で決めていたんですが、今はとにかく会社や既存メンバーとのマッチングが重視される仕組みをとっていますね。

 

ー渋谷さんが採用に最も注力されていたフェーズでは、どんなことを意識して人材を探していたのですか。

渋谷修太さん:基本的には会社に足りない能力を持っている人材を採用していました。
それから出会いと勢いを大切にして採用したりもしていましたね。

僕の考えとしては、将来起業したいのなら創業したての会社に入ったほうがいいですし、起業まではしたくないけど成長してる会社がいいとか、新しい働き方を求めているのなら、ベンチャー企業が適しているのではないかと思います。

 

「新潟で起業する」って選択肢にある?

アルビレックス新潟を応援する渋谷修太さん

ー近年新潟には色んな企業が進出していますが、渋谷さんから見て新潟はどんなところが魅力ですか?

渋谷修太さん:それには働く人と経営者両方の目線があると思います。
経営側の観点では、魅力はアクセスと採用にあります。
東京は近いし、福岡、名古屋、札幌の主要都市にも簡単に行ける。新潟空港には車を止められる場所もあるので新幹線を使う感覚で空港を利用できる。採用に関しては新潟大学や長岡技術科学大学などがあるので、いろんな学生がいるし、そもそも真面目な人が多いという県民性も利点ですね。

働く人の観点では、バランスの良さが魅力だと思います。
自然もあるなかで栄えてるところは栄えている。これだけ人口規模があり、かつ都市的機能もある、なのに他の都市と比べると子育てもしやすい環境にある。そういう場所ってあまりなくて、都会と自然がきちんと両方あるのはすごいと思います。

そしてご飯も美味しいですよね。異常なくらい安い値段なのに圧倒的に美味しいものを食べられる。同じ給与だったら絶対新潟のほうが豊かな生活ができます。
IT企業やベンチャー企業は場所を選ばずに働けるので、新潟を住む場所として選ぶのは魅力的な選択だと思います。

今までの新潟だと「大企業の支社」が最高到達点のような、キャリア的にも上限があったり、給与が東京に比べて低かったりしたんですけど、新潟にベンチャー企業が増えてくるとその環境も変わって魅力的な職場も多くなるんじゃないかと思います。

 

ー起業したいと考えているとき、学生時代はどんなことに視野を向けるべきだと思いますか?

渋谷修太さん:世界に目を向けることが大切だと思います。
僕自身は大学在学中にシリコンバレーに行って、自分の目で働く価値観や世界トップレベルの企業の働き方を見ることができて本当に価値観が変わったんです。これまで、日本、東京で見てきた社会人の働き方とは全く違って、Google本社で働いている人たちは全員楽しそうだし、オフィスも大きな大学みたいな感じで、自由なスタイルだったんです。

日本の社会に出る前のタイミングで世界を見ておいたら、きっと本当の意味での素敵な働き方や会社設計ビジョンも描きやすくなる気がします。

新潟ベンチャー協会(NVA)の取り組みとビジョンを教えてください。

渋谷修太さん:新潟ベンチャー協会(NVA)では基本的にはピッチコンテストを開催し、起業家が輝ける場所を創出しています。そこに付随して、企業やメンターとのつながりが生まれてます。

最近意識している僕のミッションは、増えてきた起業家を絶やさないことです。新潟は100年以上続く会社が全国で5番目に多い県です。そんな大先輩の中にベンチャーもうまく混ざれないかと意識しつつ、起業家合宿や勉強会を開いたりしています。

起業をしても、心が折れてしまっては消えてしまいますので、起業家同士の横のつながりを作ることも重要です。
新潟全体を盛り上げて地方のロールモデルとなり、新潟から日本全国へアプローチしていきたいですね。

2022NVS新潟ベンチャーサミット

ーその中で、今の課題点などはありますか。

渋谷修太さん:課題は女性の起業家が少ないことだと思っています。NVAでピッチを開催する際、女性応募者が1人もいないことが多くあります。

ベンチャー企業や起業家としての働き方って、女性のワークスタイルにこそマッチすると思っています。それに気づいてもらえるための取り組みができないかが課題だと思います。

 

ー素人意見ですが、事業計画を考えたりすることが高いハードルのように感じます。

渋谷修太さん:僕は会社を作るときに事業計画などは作ってないですし、会社を作った今でもいらないと思っています(笑)プランを作るより、行動するほうが大事なので。
壮大なプランを描こうと思うから無理になるんです。起業するには、いろんなやり方があるので、まずはやってみることが大事だと思います。

起業家の仕事は日常や社会の課題を解決することですから、男性起業家ばかりでは女性にとっての課題がなかなか解決されていきません。だから、ある意味女性の方がチャンスがあると思っています。

 

新潟の学生に「今、伝えたいメッセージ」とは

ー新潟や地方で起業をするために、必要なことは何だと考えますか。

渋谷修太さん:地方で起業する観点では、その環境の歴史と地理を知ることかと思います。僕が新潟に帰ってきて最初にしたことは、歴史と地理の勉強です。知らないと新潟の特性を活かせませんから。
学んだことを現代風にアレンジして、マーケティングに利用して世界に発信することが、地方で起業するにあたって大事なことだと思います。

キャリアとしての観点では、インプットをし続けることが大事だと思います。とかく日本人は、インプットは学生時代、社会人になったらアウトプットをしてお金を稼ぐかのように勘違いしているようにも思いますが、これは間違いだと思っています。学生時代はテーマ探し、そしてテーマを見つけたらひたすら探求、社会に出たらさらに経験や知識をインプット。これが本来必要な姿勢なのではないでしょうか。

 

ーこれからの時代を作る学生に、まさに求められていることだと思います。

渋谷修太さん:日本の場合、社会に出たら周囲に勉強している人って少なくなるじゃないですか。日本人は転職意欲もない上に、勉強も社会に出てからはしない。なのに先進国の中で会社に対する不満は一番たくさん抱えている。

それはある意味文化の話でもあると思っています。シリコンバレーの人たちは楽しそうに仕事をしていましたけど、驚くほど勉強しているんですよね。そういう素晴らしい環境があるのは、周囲の様子からも勉強をするという文化があるからなんです。

だから、”社会人になってからが学びのスタート”くらいの気持ちが大事なんじゃないでしょうか。

 

PLAKA夕焼け空

 

ー渋谷さんは、例えばご自身の子育ての中で何を1番大切にしていきたいですか。

渋谷修太さん:子ども達は自分でやりたいことを見つけて、やりたいことをやって生きてくれればいいと思っています。
僕が自分の親にすごく感謝していることは、起業するときに一切の反対がなかったことです。
「自分の決断に従っていいよ」というスタンスでいてくれたことには、本当に感謝しています。
だから、今度はそれを僕自身が我が子や若い人たちに提供していきたいと思っています。

それから、本をたくさん読んでほしいですね。本は知識を持った執筆者が、月日をかけて本気で作り上げたものです。読者はそれをたった数時間程度で読めますから、非常に効率が良い学習ツールですよね。
私自身が著書を執筆したからこそ、それを強く実感しているんです。だから、子供たちや若者には、たくさん本を読んで吸収していって欲しいですね。

 

***

 

今回は、フラー株式会社の会長、渋谷修太さんにお話を伺ってきました。

新潟での「ベンチャー企業」や「起業」などの括りに関係なく、これからの時代を生き、創出していくために大切なことが詰め込まれていた気がします。

とはいえ、時代を生き抜くとか、創出するとか、小難しい話ではなくて、海外に行ったり本を読んだりして、自分の知らなかったものを取得しにいくのって単純に楽しいですよね。若いうちから、この楽しさに触れようと、行動していくことが道を切り開いていく第一歩ですね。

 

渋谷 修太さん
しぶや しゅうた|経営者


1988年生まれ、新潟県佐渡市出身。国立長岡工業高等専門学校を卒業後、筑波大学へ編入学。株式会社グリーを経て、2011年フラー株式会社を創業。有力経済誌Forbesにより、2016年の若き重要人物「30アンダー30」に選出された。2020年9月末日、会長職に就任し、社会全体を見据えた活動へ注力をする。ユメは「世界一ヒトを惹きつける会社」を創ること。

フラー株式会社公式HP:https://www.fuller-inc.com/

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