日本酒は好きだけど、銘柄もたくさんあるし、どれが美味しいのかわからない…。
そんな悩みをお持ちになったことはないですか?
今回、お話を聞いたのはリアルな口コミから新たな日本酒に出会えるアプリ『Sakeai(サケアイ)』を開発、運営している株式会社サケアイの代表取締役社長、新山大地さんです。
サケアイの主なサービスは
・飲んだ日本酒の感想などを投稿して記録できる機能
・唎酒師の口コミなど、質の高い口コミで人気の日本酒や今流行の日本酒を知ることができる日本酒検索機能
・口コミで気になった日本酒をオンラインストアでそのまま購入できる機能 など
また、2022年9月20日より、AIによってパーソナライズされた日本酒を届ける日本酒定期便サービス「サケアイボックス」をリリースしました。
サケアイボックスは全国30社以上の酒蔵と提携し、様々な日本酒を1種類200mLというお手軽なサイズで、発注者の嗜好に最適化された日本酒を毎月3種類、楽しむことができます。
そんな日本酒を気軽に楽しめる素晴らしいサービスを発案し、開発した新山さんに今回はサケアイやご自身の人生についてお話を伺いました。
環境を変えた事による発見
ー新山さんは八戸高等専門学校の卒業生とのことですが、なぜ進学先に高等専門学校(以下、高専)を選んだのですか。
新山さん:僕は中学生のとき水泳部に入っていたんですけど、水泳の大会が高専のプールで行われていたので、高専をずっと前から知っていました。高校なのに大学みたいなキャンパスなことに惹かれていたことと、親が工学系の電気会社に勤めていたこともあり、それらの考えから高専に進学することを決めました。
元々、理数系科目の方が文系科目よりも得意だったことや、工業系に行けば技術職だから仕事には困らないだろうという考えなどもありましたね。
ーどんな高専生活でしたか。
新山さん:3年生まで寮に住んでいたのですが、授業と部活に明け暮れた毎日で、寮に帰ってからは友達とゲームなどをして遊ぶ、といった普通の学生生活を過ごしてました。
高専は部活動を5年生まで続けることができます。しかし、僕の場合は高専から大学への編入を希望していたので、編入試験と被る5年目の夏の大会に出場することは断念し、4年生の夏の大会が終わった時点で引退。
しかし、4年生からは寮も出て自宅から通学しており、部活を引退したものの編入試験は1年先。真面目に受験勉強だけをするには集中力が持たずに、暇つぶしとしてWebメディアの運営を始めました。
ーどんなメディアを運営されていたのですか。
新山さん:当時はちょうどビットコインが話題になっていた頃だったので、仮想通貨やブロックチェーン系のネタでネット記事を書いていました。その他、まとめサイト(キュレーションサイト)なども色々やってみて、最終的に2・3個を中心に運営して。
期間としては、部活引退後の4年秋頃から5年生夏の編入時期まで、途中少し放置する期間などがありつつもそれなりに続けていました。
ーその後、長岡技術科学大学に編入されてからいよいよ起業の道へ進んでいかれたのですね。
新山さん:そうですね。Web運営が楽しかった経験から、大学編入した頃には既になんとなく「起業したい」という思いはあって。その思いのもと、長岡のイノベーション拠点NaDeC BASE(ナデックベース)で行われるイベントなどに参加していたところ、長岡で何かしたい・起業したいと思っている同級生や先輩と出会うことができました。そして、その中の何人かと学生団体を立ち上げ、長岡市のピッチイベントに参加したりビジネスアイデアを考案するイベントに参加したりするように。
高専は良くも悪くも5年間環境が変わらないので、大学の進学などで環境を変えないと新しいことに挑戦するということが起きづらいです。自分で考えとかを変えない限りはなかなか厳しい環境ではありますから、編入を希望して環境を変えたことは、今思うと大きな選択でしたね。
ー学生団体への活動以外で、学生時代の印象に残っている経験はなんですか。
新山さん:3年生の終わり頃、学校が募集していた短期留学に応募し、インドに2ヶ月ほど留学したことですね。
大学と提携しているインドの大学研究室に配属され、ブロックチェーンの研究をして論文を書いたりしていました。
正直、みんながよく話すような「留学に行って人生変わった!」なんてことはなく、それなりに楽しんで、それなりに馴染んでいましたね(笑)
1日3食の全てが辛い食事だったり、時間にルーズな文化だったりに、最初は戸惑いましたけど、割とすぐに慣れて日常になっていました。
その間、サケアイアプリの開発などは止まっていましたが、そんな学生ならではのいい経験も積みました。
日本酒の沼にハマり『サケアイ』を作る
ー日本酒とはどんな出会いがあったのでしょうか。
新山さん:僕は青森の八戸市出身なんですけど、青森にいたときは飲み会をしても日本酒に触れ合う機会は殆どなかったんです。しかし、新潟に来てからは飲み会に日本酒が出てくるのが当たり前で、なおかつその美味しさに衝撃を受けた、というのが日本酒との出会いです。日本酒には銘柄も味もたくさんあって奥が深いなと思いました。
ー大学編入後、ピッチ大会などへ積極的に参加されていた中で日本酒アプリ「Sakeai(サケアイ)」のサービスイメージを構想されたのですよね。
新山さん:大学生時代に日本酒にハマり、同様に他の何人かのメンバーも日本酒にハマっていたので、なにか日本酒を使ったビジネスをやりたいと思い、アイデアを考えました。大学3、4年生のときですね。
そして4年生になってから本格的に動き出すことに。当時は、アプリを作れるエンジニアがいなかったので、独学でアプリ開発について勉強しました。その後、4年生の終わりごろ2月に法人を作り、5月にアプリをリリースしました。
ー日本酒をビジネステーマにしたからこその苦労などはありますか。
新山さん:日本酒に関して、網羅的に整っているデータベースがなかったことです。
どの酒造がどのお酒を作っているのかまとまっているものがなかったので、酒造全体のデータベースを作ることにすごく時間がかかりました。それ自体はお金にならなかったので、辛かったですね。
データベースを作ってから、飲んだ日本酒を投稿するサービスをはじめたんですが、そこのマネタイズがなかなかできなくて、ビジネスとして難しかったです。
今はサケアイのアプリの中に23,000種類の日本酒データがあるんですが、リリース当初の段階では3人で1万5000種類のデータを集めたので、そこはすごく大変だった部分です。
ーサケアイにはどんなサービスがあるのでしょうか?
新山さん:飲んだ日本酒を記録、投稿できる機能、知りたい日本酒を検索できる機能、気に入った日本酒をオンラインでそのまま購入できる機能が主なサービスです。
会社として今はサケアイアプリのWEB版の開発に力を入れています。
質問に答えるだけで自分の好みの日本酒がわかる「日本酒診断」は、アプリのときにはなかったサービスです。
毎月定額で自宅におすすめの日本酒が届くという、サブスクサービス『SakeaiBox(サケアイボックス)』は届いた日本酒に対して「美味しかった/美味しくなかった」という評価ができるようになっているので、その評価から次回配送する日本酒をカスタマイズするというAI技術を使っています。
ー大学時代に立ち上げた学生団体では、イベントなどに参加する中でさまざまな事業を考案されたと思いますが、サケアイの他にはどんなアイデアがあったのですか。
新山さん:「長岡の交通を変える」というテーマのときは、今となってはよく耳にする”タクシーの相乗りサービス”をプレゼンしました。その時々のテーマに合わせてアイデアを出していましたね。”どんなアイディアを出すか”というよりも”アイデアを引き出す力をつける”のが主な活動目的でした。
ー高専や大学に通われていたとき、周囲に起業家志望の方は多かったですか。また、就職するか迷ったりはしませんでしたか。
新山さん:多くはなかったです。就職にあまり困らないというのが高専の良さでもあるので。
僕の場合、大学を卒業してから大学院に進学して、今年の3月に大学院で修士をとって卒業しました。その時も就職しようとは思わず、出来るとこまで今の仕事をやろうと思いました。
正直、就活がめんどくさかったのもありますが、大学院時代に既にサケアイアプリをリリースさせていたので、就職と迷ったことなどはなかったですね。今思うと、経験としてやっておいてもよかったのかなとは思いますけど。
ー会社を作られた時、ご両親にはどう話していたのですか。
新山さん:起業した際、両親にはとくに何も話していませんでした(笑)就職しろとも言われなかったです。
何かやってるということは、両親もなんとなく知っていたとは思いますが。はっきりと知った時も、今も、「好きにやりなさい・頑張って」というスタンスでいてくれています。就職しろと言われたこともないので、本当にありがたいです。
Sakeai(サケアイ)を通じて、日本酒を世界へ
ー新山さんにとって、ご両親とはどんな存在ですか。
新山さん:父とは普段から特段たくさん話をするわけではないですけど、何かしたいといった時にはいつも自由にさせてくれていたので有り難かったです。ゲームは厳しかったですが、部活とかで必要なものは惜しみなく買ってくれてたりもしましたし、良き理解者なのかもしれないです。
母は、男3人女1人の4人兄弟を育ててくれたすごい存在ですね。学生時代は全員部活もしてて、朝早かったりもしましたが、それでも送り迎えとか弁当作ってくれたりして、大変だったと思います。
ー起業家として、新山さんが日々頑張れる原動力ってなんですか。
新山さん:楽しいことをやっているからですね。自分の好きな日本酒というジャンルで事業ができていることも楽しいですし、自分の作ったサービスが世に出て、それを楽しんでいる人がいるのも嬉しいです。
アプリの感想などがSNSで投稿されていたりして、褒められていることを目にするのは嬉しいです。
ー今後サケアイをどう展開していきたいですか。
新山さん:サケアイのサービスを海外に広げていきたいです。それと同時に日本酒を世界に向けて広げていくのが最終目標ですね。
僕自身、日本酒が大好きで毎日飲んでます。だから、日本酒を世界に通用するお酒にする一端を担えたら、何よりも幸せです。
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今回は青森県八戸市出身で若くして新潟で活躍する起業家の新山大地さんにお話を伺うことができました。
新山さんがこよなく愛する「日本酒」をベースに、世の中のお酒好きな人達がつながるプラットフォームサービスを作ったことで、より気軽に日本酒というお酒を楽しむことができる様になったと思います。
近年叫ばれる「若者の酒離れ」
コロナ禍の影響でお酒を飲む機会が少なくなったことや、チューハイやビール、ウイスキーなどの目まぐるしい台頭もあって、日本の伝統的なお酒である日本酒は特に若者から離れていっているような印象を持ちます。
しかし、新潟には美味しいお米、美味しいお水、そして美味しいお酒があります。世界に誇れる日本酒をアプリを通して世界に広げることができたらとてもすごいことではないでしょうか。
実際、少しずつ海外での日本酒消費量も増えていっているというデータもあります。
インターネットが発展した現代ではEC販売を通してグローバルに商売をすることが、厳しい経済社会の中で生き残るコツなのかもしれません。
これからの「Sakeai(サケアイ)」の発展が楽しみですね!
- 新山 大地さん
にいやま だいち|経営者
1997年生まれ、青森県八戸市出身。八戸高等専門学校を卒業後、長岡技術科学大学の情報・経営システム工学課程へ編入。大学4年時に株式会社サケアイを設立し、代表取締役に就任。日本酒レコメンドアプリSakeai、パーソナライズ日本酒定期便SakeaiBoxを展開している。目指すビジョンは「お酒を愛するユーザーを喜ばせ、感動させ、業界を盛り上げる」こと。
株式会社Sakeai公式HP:https://sakeai.co.jp/
SakeaiBox:https://subscription.sakeai.com/
今回取材したのは魚沼スッポンの井口陸弥さん。 北海道大学でアワビの陸上養殖を研究したのち、一旦は東京のベンチャー企業で働きますが「自分自身の本当の強み」と向き合う中で、Uターンを決意。 「強みを活かして日本一に!」という意志のもとス[…]
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(取材・校正:ayaka 編集:yamashita)