今回は、サウナ小屋の提供をはじめとしてサウナに関する幅広い事業を展開するHIJILI inc.代表であり、建築士の石川聖也さんに取材を行いました!
HIJILIの事業は、ただサウナを普及させることをゴールとしているわけではありません。使用する木材や繊維は、ほとんどが新潟県産で、既にある環境資源をサウナと融合させることにこだわっています。
この記事は、新潟で生まれ育ち、新潟でキャリアを積み、新潟のための新たな挑戦をする石川さんの過去と未来を辿ったものです。
代わり映えのしない毎日に、何か変化が欲しい、自分は何ができるのかと考えている人に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
HIJILIとは
HIJILIの由来は石川聖也さんのお名前から取られています。聖(ヒジリ)という言葉には「火を知るもの」という意味があるそう。
まさに石川さん自身のアイデンティティや、石川さんが創り出したい世界観を表す言葉。
そんなHIJILIでは、「地元である新潟の素材・企業・職人さん」にこだわり、自然豊かな新潟・魚沼杉を主材にしたサウナ小屋の開発と販売をはじめ、多様なサウナ施設等の提案・開発を主軸に、幅広い事業を展開しています。
サウナが強化材となり、自然をさらに満喫できる新しい体験価値の創造を目指し取り組んでいます。
建築の力を趣味のサウナへ
ーサウナに興味を持たれたきっかけを教えてください。
石川聖也さん:建築家である谷尻誠さんが行うトークイベントに、サウナーの松尾大さんという方が出演されていたんです。その対談動画を見たことがきっかけですね。今までサウナには苦手意識があったんですが、その動画ではじめて『サウナ』に触れました。サウナの入り方や楽しみ方などを面白く説明していて興味本位で実践してみたら、ズルズルとのめり込んでしまいました(笑)
※広島県出身の建築家、谷尻誠さん(SUPPOSE DESIGN OFFICE)が各界のゲストを広島に招いて行われるトークショーイベント
ー建築家目線でのお話もされていたからこそ、サウナ建築に興味を持たれたんですね。
石川聖也さん:そうですね。サウナの話だけだったら、趣味で終わっていたかもしれません。建築とサウナって繋がるんだ!という発見から、自分でサウナを作りたいという想いが芽生えました。趣味から出会って動き出しましたね。
ーそうして、独立の道を歩まれたのでしょうか。
石川聖也さん:正確には企業内起業をしました。独立して会社を作るのと近いですね。新潟県の『企業内起業・第二創業推進事業費補助金制度』を利用して、会社の登記をしました。
※会社勤めの人が起業する際に支援をしてくれる制度
現在は石田伸一事務所で設計の仕事をしながら、自分で作った会社ではサウナ建築事業をメインで行っています。
世界一のサウナを生まれ育った新潟で
ー新潟でのサウナ事業の可能性について教えてください!
石川聖也さん:サウナはいま第五次ブームと言われていて、特に若い子や、起業家からのニーズが高まっています。日本人の4人に1人がサウナ愛好家と言われていて、そのうちの10%がヘビーユーザーで、月に4回はサウナに入ると言われているんです。
他にも、「サ道」というドラマが放送されたり、サウナシュランというミシュランのサウナバージョンがあったり、「整う」「サ活」と言う言葉が流行っていたり、サウナ市場は今とても盛り上がっています。
そして現在では旅行会社が「サ旅」を企画したりもしています。サウナシュランで評価されているサウナは地方に多く、サウナ好きの人は地方で評判の良いサウナを目当てに旅行したりするので、旅行会社が「サ旅」という旅行プランをパッケージ化して売りに出しているんです。
つまり、地方のサウナは今とてもアツいんです。だからこそ建築士というキャリアを用いて、新潟県の豊富な資源を活用し、新潟でサウナを盛り上げたいです。
ー建築士だからこその、こだわりポイントを教えてください。
石川聖也さん:地材地建ですね。これはSIA inc.から続くこだわりです。新潟の魚沼杉を主材にしたサウナ小屋をつくったり、サウナ服も上越地域のメーカーさんや職人に発注をしたりしています。地域と連携していくことで、相乗効果を生んでいきたいです。
あと、「県内需要=内需」を大切にしていきたいんです。例えば、新潟県民には枝豆がとても人気ですよね。新潟の枝豆の作付け面積は全国1位と言われていますが、出荷量は7位程度。理由は新潟県民が消費しているからなんです(笑)たくさん作っているのに、新潟で消費しちゃうから外に出ないというデータがとても面白いなと思っていて。
新潟県は明治時代、人口が1番多かったんですよ。だからこそ枝豆みたいに新潟県内の内需が上がり、地元で消費されて地元の生産者にお金が入るという循環が生まれていたそうなんです。言い方は良くないですが、外からモノを買ってしまうとお金は外に流れてしまいますよね。
新潟でモノづくりをしたり、新潟のモノを使うことによって経済も循環するし、資源も回っていく。自分が触れているもの、素材、空間が地元のもので出来ていると、愛着が持てる一つの大きな要因になると考えています。
ー内需を生み出すことが今の目標というわけですね。
石川聖也さん:今はネットも発達して、どこにいても何でも買えてしまうからこそ、「地元の中での循環」がとても重要になっていくと思っています。これは食べ物や娯楽だけではなく、キャリアや文化にも言えます。例えば建築業界では、職人さんは常に人手不足で、跡継ぎがいない課題を抱えています。地方が抱える課題でいうと、人口減少・流出も挙げられます。
若い人が新潟で仕事をしたいと思える仕組みを作り、「今あるもの」を残していく。そんな時、「内需」という考え方はとても大切なんです。地元の職人さんを起用したり、地元の方に仕事を頼んだりすることで、経済を回す仕組みづくりができます。
まずは地元の人に愛されるものを
ー地方創生にも繋がっていきますね。
石川聖也さん:サウナ事業をはじめて分かったことは、サウナの可能性は無限大だということです。ライフスタイルはもちろん、建築空間からアウトドアまでありとあらゆるものと繋がります。僕が取り組む活動をきっかけとして、その地域のファンを作っていくことが僕の役目だと思っています。
その中でも、1番力を入れていきたいのは生まれ故郷である佐渡です。僕が生まれた頃なんかは10万人くらい人口がいたんですが、若い人の島離れが影響し、今では5万人まで減ってしまっていて。サウナを皮切りに、たくさんの人が集まるきっかけづくりになれたら嬉しいです。
ー具体的に、現在はどんなプロジェクトを進められているのでしょうか。
石川聖也さん:去年ごろからタキビサウナというテントサウナのイベントをビルの屋上で行っています。テントサウナはどこでもできるけど一般的には川や海で行うとされているんです、水風呂代わりに海や川に飛び込めるので。この体験も貴重ではありますが、テントサウナさえあれば誰でもどこでもできる体験だとも言えます。だからこそ、ビルの屋上なんです。ビルの屋上でサウナに入る経験はなかなかできないと思って(笑)
そして他に、現在進行中のプロジェクトが3つあります。
1つ目は、空きビルのテナントを改装してサウナの専門店を開こうというものです。これは今年オープンを目指しています。そこで使われる材料も新潟の資材にこだわり、新潟を感じられるものをつくりたいと思っています。
そして2つ目は、新潟県佐渡市の観光資源を使ってサウナを作ろうという取り組み。
佐渡の観光地にサウナをつくり、新潟らしさをふんだんに盛り込んだサウナを楽しみながら佐渡の資源を楽しんでもらいたい、そしてサウナをきっかけとして異世界に行ったような体験を作れたらなと考えています。その体験がしたくて各地から新潟に足を運ぶ人が増えたりと盛り上がっていったらとても嬉しいですよね。
3つ目は、今年夏にオープン予定の「谷根のサウナ」。柏崎市にある谷根という集落に、新潟の名水が流れる滝つぼがあるんです。そこにサウナ小屋を建てました。この谷根のサウナは、温泉でいう“野湯’’のような“野サウナ’’、無料で入れるサウナというちょっと変わった試みをしているサウナです。集落(地域)との繋がりや人と人の繋がりなど、いろんな繋がりを生み出すことを目指したサウナです。新潟の名水が水風呂。サウナに入って天然の水風呂に飛び込むなんて、ほんと最高ですよね。
やっぱり体験として、普段できないようなことをこれからもどんどん仕掛けていきたいなと思ってます。
僕はまだ会社を登記したばかりなので、まずは僕のことを知ってもらって、そしてこの活動のことも知ってもらいたいです。今後は新潟だけでなく他の地方でも地材地建にこだわったサウナ建築をすることが目標です。県外から沢山の人がその地域の資源を取り入れたサウナを目的として訪れ、そこでしか味わえない体験を得られるように設計したいですね。
新潟でサウナづくりを専門として会社を起こしてる方はまだ他に居ないので、新潟にたくさんの面白いサウナが増えるよう頑張っていきたいです。
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