新潟進出が決定して1年半、オフィスを構えてからは1年が経ちました。
毎月2回、東京から2時間かけて新潟オフィスに通う日々を続けて、街を観察したり、人々と触れ合ったりする中で、新潟が抱える本当の課題の根深さを感じることが多くなってきました。
もちろん、これから述べることは、私の個人的な意見と見解に過ぎませんが、事あるごとに色々な場所で色々な人にぶつけ、新潟の人が感じている課題感とすり合わせてみたものです。
信じるか信じないかでも無く、意見を受け入れるか入れないかでも無く、私からこんなふうに見えているんだよ、しらんけど的見解として知って頂ければと思い、ここに少しまとめてみます。
今回は、とりあえず新潟駅周辺についての課題です。以下で述べる多くの新潟は新潟駅もしくは新潟市を指しているんだな、と思いながらお読みくださいませ。
新潟の課題1:新潟らしさが駅前に少なすぎる
新潟には何もないよ。と多くの人が言います。
生活はし易いけど、何もないよ、と。
ところが、私が最初の頃、新潟で数日過ごして思ったのは、「なんでもあるじゃん」でした。
そこから数ヶ月新潟通いをしていくと不思議なことに「なんもないじゃん」と思うようになりました。
実際、新潟駅前には、なんでもあります。
ファストフード、大型家電量販店、100円ショップ、ディスカウントストア、コーヒーショップ、ファミレス、もちろんコンビニも。
東京と同じような日常を送ることができてしまいます。
その代わり、新潟でないと食べられないもの、新潟だから触れられるものの選択肢が非常に少ないなと感じています。
たとえば、新潟は一次産業が盛んで、食のイメージがやはり強くありますが、ある日新潟の食の魅力を求めて、スーパーマーケットに足を運んでみましたが、驚くほど県産品が少なく非常にがっかりした気持ちになったこともありました。
とにかく最近の新潟滞在中は、新潟じゃなくても食べられるもの、新潟じゃなくても買えるもの、新潟じゃなくてもできることばかりして過ごしています。
お土産品として出会う新潟、とりあえず来たからには名物食べておこうという新潟ではなく、日常として触れることができる新潟らしさとはなんなのでしょうか。
新潟の課題2:イケてないスーツ比率が高い
スーツ不要論を唱えているわけではありません。
制服的にスーツを着ていればいいというスタンスに違和感があるのです。
スーツを正しく着こなすためには、必要な知識や手入れが必要です。
残念ながら、新潟で見かける人の多くは、本来スーツ着用によって得られる信頼感や清潔さを手にできてはいなさそうです。
それとは別の違和感もあります。
雪の日に革靴で寒そうにスーツで通勤していたり、車の雪下ろしをしていたりするのです。危ないし、寒いし、見ていて心配になります。スノーブーツ履いて、コート来て、帽子被って、手袋したらいいのに、と思いますし、冬の装いとしては格段に素敵になるはずです。
おしゃれかどうか、という観点で課題提起しているわけではありません。
会社に行く、仕事に行くという行為の中に「自分が見られる」という意識が欠如しているのではないか、ということなのです。
社内外問わず、外に出て仕事をするということは、社会に触れに行くということです。
自分が何を着て、どんな立ち振舞いをするのかは、自分自身の品格品位だけでなく、ビジネススキルのレベルを表現することに繋がります。
つまり、ここで私が言いたいのは、いつ見られても、魅せられる状態にないというのは、なんとなくビジネスとしても内向きの印象を受けてしまうなあ、ということなのです。
自分たちのことを知っている人と仕事をするか、自分が魅せる必要がない相手と仕事をする場面しか想定されてないのではないか、と憶測してしまうという点にやや残念さを感じます。
新潟の課題3:素敵な場所までたどり着けない
新潟には古町や白山関屋といった、新潟の今と昔が程よく交わりワクワクするヒト・モノ・コトと出会えるエリアがあります。
ですが、この場所を訪れ、触れ合うことができたのは、新潟に済んでいる社内メンバーのおかげでした。
新潟の地形や発展の背景から、地理的に行きづらいということはもちろん1つの要因ではあると思いますが、それ以上にそこまでいくモチベーションがまずないという問題があるのではないでしょうか。
何度も訪れたい地というものには、風景、人との触れ合い、過ごした時間の温度など、その土地がまとう感触のようなものがあります。
しかし残念ながら、新潟駅を降りてから触れるものには、この手触り感のようなものが感じられないのです。
毎回新しい発見があるなと思うぽんしゅ館はそういえば南魚沼の会社だし、新潟の美味しいものが常にいただけるSUZUVELさんや新潟のユニークなモノやコトに出会えるMOYORe:やNINNOは駅チカなのに存在を知らないと触れ合えないし。
新潟には、たぶんこんなふうに駅を初めて降りた人には、容易にたどり着けない「素敵な新潟を感じられる場所」が沢山あるのだろうなと思うのです。
ただひたすらに、物理的にも心理的にもアクセスが悪い、そんな感じがするのです。
新潟の課題4:ノンアルひとり飯の行き場がない
とても個人的な事情ではありますが、私はアルコールを受け付けない体質です。
ステレオタイプな新潟のイメージが如く、やはり新潟で美味しいものを食べるためには美味しいお酒を出すお店が中心のようです。
さっと、新潟食材を使ったひとり飯を味わう、ということが残念ながら叶いません。
ノンアルコール組に残された新潟の食事は、ラーメン、へぎそば、タレカツ丼の3択です。
どれもそれぞれ魅力的ですが、40歳を過ぎた元来少食の私には、へぎそば1択と同様であります。
例えば、ランチにSUZUVELで新潟食材を堪能してしまった日や連泊の時は、東京でも食べられるかつ東京では積極的に選ばないコンビニ食やファストフードで空腹を満たします。
頑張って弁慶に一人で並んでみたこともありますが、価格と距離と時間の障壁が日常には高すぎて1度きりで断念しました。
新潟は一次産業が盛んであるはず。
美味しい食に溢れているはずなのに、私の新潟の日々でそれを味わうためには、ランチで堪能して夜は諦めるか、飲み会をセッティングするかという具合なのです。
一人でも居酒屋に行けばいいじゃないかと思うかもしれませんが、ノンアル組が一人でワイワイガヤガヤした中で食を堪能するのは、相当な鍛錬が必要なのです。
新潟に通う頻度が上がれば上がるほど、新潟の食の魅力に触れられる率が下がる、ツライ。
そういったわけで、最近は新潟食材を買って東京で食べる、というなんとも言えない誤魔化しをしています。
新潟の課題5:新潟のビジョンがみえない
新潟ってどんな場所だと思いますか?
多くの人が冬は雪深く、夏は緑が多く、遠くまで青空が広がっていて、車を少し走らせたら酒蔵や田んぼがみえてくる、そんな風景を想像するのではないでしょうか。
しかし実際は、鉛色の空と気まぐれ雨がおなじみで、雪はめったに積もらず、たまに積もればみんな滑って転ぶし、割と夏は湿気がすごくて、大きなビルやマンションもそれなりにあります。
県内には、燕、三条、長岡、十日町、魚沼、上越や妙高、村上などある種のイメージやブランドを背負った市町村が数多くあります。
さて、新潟はどうでしょう。
訪れた人、外に出ていった人の記憶に残したい風景、残したい印象はなんでしょうか?
県庁所在地であり、政令指定都市でもあるという事実以外に県内外の人にとって新潟ってなんなのでしょうか?
「ねえ、あなたはどうしたい?どうなりたい?」
もしも新潟が人であるならばそう問いかけてみたいと思っています。
勝手に新潟課題を妄想解決してみる
ここまで読んで、誤解して頂きたくないことは、新潟に魅力がないということでは決して無いということです。
むしろ、たくさんの魅力に溢れていると思います。
ただ、それが訪れた人に伝わらないし、残らないということなのです。
ということで、新潟の魅力が端的に伝わるようにするためには、どうしたら良いのか。勝手に妄想してみようと思います。
新潟の魅力は多く分けると3つ、食・文化・人ではないでしょうか。
1・食の魅力で課題解決
まず、食を広く堪能するためには、新潟食材を活用したお惣菜屋さんもしくは、お弁当屋さんを駅ナカに設置します。
お惣菜には、伝統的な食材を使ったものや郷土料理だけでなく、旬の地元野菜を楽しめるサラダなどが中心です。
おにぎりやお米は、あえてコシヒカリ以外の品種を並べ、おかずとの相性を提案します。
そして、ぜひセットには、お味噌汁かお茶を添えたいものです。
県庁所在地であることを活かして、新潟県内の美味しいものを全て集めてしまう、という贅沢さを届けたいですね。
なんなら、駅ビルに新潟の食ツアーができるフードコートを設けても良いかもしれません。
お煎餅を焼くデモンストレーションや日本酒の生産工程を社会科見学が如く見ることができたり、お茶のスタンド作ってみたり。
2・文化の魅力で課題解決
新潟は、ダンスや音楽、アニメなどの文化的発展が特徴的な都市でもあります。
新潟の文化を発信する大型ビジョンがあったり、VRなどを活用して、ライブ感を味わえるコンテンツが気軽に楽しめたり、伝統的な文化ももちろん伝承していきたいですが、市民が育んできた文化に外の注目を集める支援を積極的に行うことで、街の人を自然に巻き込むことができるのではないかと思います。
もちろん、田植え体験を駅の屋上でできたり、ちまきや笹団子を包んでみたり、キオスクで枝豆を売ったりなど、文化体験型のコンテンツをバランスよく散りばめることもできるかもしれません。
3・人の魅力で課題解決
最後に、人ですが、新潟は何もないが何でもある場所です。
それゆえに、個人でも新しいことを始めやすい場所でもあると感じています。
ただ、それはこれまで積み重ねてきた新潟の姿の中にいると、感じにくいことでもあります。
今、新潟で生まれている事業や立ち上がったり受け継がれたりしている企業に注目してみると、一気に新潟の景色が変わります。
新しいことしかやっていない、世界や地球規模で活動している、ジェンダー区分や年齢を前提としないが当たり前の環境を新潟のスタンダードにしてしまう。
女性の役員比率やDX推進度合いなど、他の県や市町村と同じ指標を負うのではなく、女性の起業率や男性の家事参加率、学生インターンの雇用率や社会人学生の従業員比率など、新しいグローバルスタンダードを打ち出すことに挑戦してみる、くらいのインパクトを出したいところです。
それぐらい魅力的な活動をしている人、価値観を広げようとしている人が実はたくさんいるのですが、注目させる大きな力が必要です。
本気で新潟の課題と向き合う
新潟の課題を簡単に整理すると、見た目は近代化しているのに、価値観や風土がアップデートされていないことに尽きます。
新潟に限らず、あらゆる地方都市はかつて東京化を目指しました。
東京にあるものがこの街にもある、がステータスであり、近代化の象徴でした。
しかし、情報化が進み、物流(流通)が整備されている現代において、価値のある地方都市には“個性があること“が価値に変わりました。
「ここにしかない」「ここから生まれた」という地域に国内外の人々は注目しています。
私達は新潟県と新潟市に企業誘致の機会を頂いて、オフィスを構えています。
これも新潟の課題を解決する1つの施策です。
ただ、私個人がこれまで様々な地方との関わりで得た教訓は、
「外から来た人が一生懸命やっても、結局根本課題の解決にはならない。その土地の人が本気で変化を望んで、自分事として取り組む人が圧倒的に増えないと。」
ということでした。
そのために、新潟のいろんな場面や環境で悔しい想いをした、子育て中の女性を中心に雇用しています。
そのために、新潟のすごい人ではなく、自分で考えて自分の足で立って行動して、身の回りより少し広い範囲の人に影響を与えているヒトやコトを取材しています。
そのために、新潟の次世代に対して、これまでの新潟での働き方以外の選択肢を得られる機会を模索して活動しています。
私達が解決できる新潟の課題は、ほんの小さなものかもしれません。
切り取り方や見方が偏っているかもしれません。
それでも、これを読んでくださった新潟に縁のあるみなさんが、周りの誰かと新潟の課題について、お話をするきっかけになれば、いいなと思いつつ新潟のビジネスホテルでこの記事を書きました。
あくまで私個人の意見ですので、話半分に留めておいてくださいませ。