挑戦の原点は「好奇心」と「ご縁」──新潟で食の未来を築く吉田美穂さん

地方都市・新潟で、食を軸にしたイノベーションを生み出そうと奮闘する女性がいます。その名は吉田美穂さん。アメリカでの留学やベンチャー企業での経験を経て、現在は新潟で「フードテックタウン構想」に取り組み、フード産業のスタートアップを支えるエコシステム構築に注力しています。

美穂さんの挑戦の背景には、好奇心とご縁を大切にした生き方、そして世界を良くしたいという強い思いがありました。今回の記事では、美穂さんのこれまでのキャリアや人生観に迫り、その原動力と新潟での挑戦についてインタビュー。
この記事を通じて、あなたの中に新しい一歩を踏み出す勇気が芽生えたら嬉しいです。

吉田 美穂さん Yoshida Miho

神奈川県生まれ、新潟県在住。高校卒業後にアメリカへ留学し、シリコンバレーでITスタートアップに参画。帰国後はフラー株式会社の創業初期メンバーとして、新規事業開発、広報・人事、社長補佐など幅広い業務に従事し、新潟をはじめとする拠点立ち上げや海外展開も手がける。その他、大学では起業に関する講義を担当し、NPO主催の教育関連イベントではメンターとしても活動。現在はオイシックス・ラ・大地株式会社にて「新潟フードテックタウン構想(仮称)」のコミュニティマネージャーを務める。

フード産業を新潟から世界へ──「フードテックタウン構想」

豊かな食産業と食文化を誇る新潟から、フード産業の未来を築くプロジェクトがスタートしました。それが「新潟フードテックタウン構想(仮称)」。この構想は、新潟に世界有数のフードテックスタートアップの集積地をつくり、新潟を世界の食の都市へ発展させることを目指しています。
新潟は、農産物や水産資源が豊富で、食文化が根付いた地域。食分野の大企業や研究機関も多く点在してます。そうした食関連の企業や教育研究機関、そして行政、その他の地域企業が連携して、食のスタートアップを支援していくエコシステムを構築していくというのが、このプロジェクト。

教育機関との連携を強化し、学生たちがフードビジネスに関わるチャンスを得られるような仕組みを作ることは、フード産業における次世代のリーダーを生み出すことも期待されます。

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新潟から始まる食のイノベーション

ーーフラー株式会社を創業初期メンバーとして長年支え、今年の春に卒業された美穂さんですが、今はどんなことをされているのでしょうか?

吉田美穂さん:新潟で「フードテックタウン構想(仮称)」プロジェクトに関わっています。この構想では、新潟の地に食関連のスタートアップが多く生まれ、成長に必要な支援をしっかりできる環境を構築していくことを目指しています。
まず、学生が起業しやすい、研究を社会実装しやすい、といったスタートアップが生まれやすい環境づくり。そして、スタートアップが成長していく上で必要な、資金調達や、売り先の支援ができる体制。新潟を中心とした教育・研究機関、食に携わる企業、行政、そして食の事業をしているわけではないけど応援してくれる企業さん、皆さんと一緒になってそういった環境や体制をつくっていきましょう!というのがこの構想が描いているものです。
新潟の可能性が最大限に活きるプロジェクトだと考えています。新潟が世界的な食の都市になったらとても素敵ですよね。この地から世界へ食のイノベーションを発信していきたいです

また、学生たちが起業に挑戦できる環境も整えています。新潟から世界に挑戦する起業家がたくさんでてきてほしいですね。

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ーーなぜこのプロジェクトに参画することになったのですか?

吉田美穂さん:「ご縁」ですね。アメリカ時代からの友人が、今オイシックス・ラ・大地のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)FutureFoodFundで海外投資を担当していて。オイシックスがこれから新潟で「フードテックタウン構想(仮称)」プロジェクトをはじめようとしてるんだけど、と声をかけてくれたんです。新潟に移住してきてから、新潟はお米やお酒をはじめ世界に誇るものを持っていて、食に大きなポテンシャルがあると強く感じていましたし、食に関する社会課題には元々思い入れがあったんです。想い、ご縁、タイミングなどがここで見事に繋がった感覚がありました。

私自身、小さい頃に飢餓問題のニュースを見て、それが「世界をもっと知りたい!」という原動力にもなっていて、一つの原点なんです。日本で暮らしていると当たり前にある暮らし、とりわけ「食べ物が当然にある暮らし」が、当たり前ではない社会だってあるんだ、という衝撃を当時受けたんです。新潟での挑戦は、原点でもある”食”の課題に取り組むものであることに大きな「ご縁」を感じていますね

大切にしたい人生の価値観

ーーアメリカに単身渡米したり、会社の創業・成長期に中心メンバーとして奔走されていたり、パワフルにご活躍されてきた美穂さんですが、これまでの選択を振り返ると、どのような軸があったのでしょうか?

吉田美穂さん:私の人生の軸は「好奇心」と「人の幸せ」ですね。高校生の頃、日本だけで進路を決めるのは違うと感じて、アメリカ留学を決めたんです。向こうでは、全く違う文化や価値観に触れて、世界ってやっぱり広いんだなと実感しました。それと同時に、文化や背景が違っても、人って誰もが「幸せに生きたい」と思っていることは共通しているんだと気付いたんですよね

その後、スタートアップやベンチャー企業での経験を重ねながら、仕事は社会課題を解決するため、困っている誰かを助けるためにあって、自分はどうしたら一番社会に貢献できるのかと常に考えるようになりました。「私の挑戦は、誰かの役に立つことを目指している」といつも思っているんです。この考え方が、今の仕事にもすごく繋がっています。

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ーー挑戦を続ける中で大事にしていることは何ですか?

吉田美穂さん:「失敗を恐れないこと」と「周りの人と幸せを共有すること」ですね。私は失敗を「学び」だと捉えていて、成長の機会だと思うんです。
それに、自分と周囲の人たちがしあわせに生きられているか、人生を楽しめているか、をよく考えるようにしています。最近は、音楽や創作活動といった自分を素直に表現する時間を意識して取るようにしているんです。常にポジティブでいられるように気持ちをリセットして、次の挑戦に向かうエネルギーを得ているんです。このバランスが、私が挑戦を続けられる理由のひとつだと思います。

挑戦の一歩は「楽しむ心」から

ーー目の前のことがうまくいかなかったり、苦しかったり迷いを感じたとき、どう乗り越えてきたのでしょうか?

吉田美穂さん:迷うこと、いっぱいありましたよ。色々上手くいってないように感じたり家族との時間が取れなかったりすると、「本当にこれで良いのかな?」って思うこともありますね。

でも、そのたびに救ってくれるのはやっぱり周りの人たち。家族や仲間と話す中で、気付けることが多いんです。自分だけで考えていると思考の限界があって、そっかそういう考え方、やり方があったんだって気付かされますよね。
あとは、自分がどうしてこの挑戦を始めたのか、その原点に立ち返ることも大事にしています。「何を大切にしたかったんだっけ?」って振り返ると、また前に進む力が湧いてくるんですよね

失敗も含めて挑戦の一部なんだと思えたとき、次に進む道が自然と見えてくる気がするんです。

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ーー美穂さんにとって、新潟で挑戦することの魅力とは何ですか?

吉田美穂さん:新潟の魅力は、人の温かさと自然の豊かさだと思います。協力的で、何か始めようとすると、「一緒にやろう」って手を差し伸べてくれる人は多い。この距離感は素敵ですし、新潟で挑戦する良さだなって感じてます。

それと自然が豊かで、自然に触れる機会も多い。自然に触れると、壮大な自然の中での人間の小ささを改めて感じて、自分の悩みだったりが小っぽけに思えてリフレッシュできたり。都会にはない、このバランスが新潟ならではの魅力だと思います。

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美穂さんの言葉から、新潟で挑戦することの特別さと、周りの人とのつながりを活かす力強さを感じました。迷いや挫折を原動力に変えて進んでいく彼女の姿には、多くの人が共感し、勇気をもらえるはず。

「失敗も挑戦の一部。それを楽しむ心が大切なんです」と語る美穂さん。あなたも、新潟での挑戦や、自分自身の挑戦に一歩踏み出してみませんか?