音楽が好きな気持ちを探究する!松田蓮くんのマイプロジェクトとは

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今回は、学生取材の第3弾!

これまた高校生マイプロジェクトで出会った学生さんです。
新潟市内の高校を卒業して、春から関東の大学へ進学された松田蓮くんにお話を伺ってきました。

蓮くんは新潟マイプロから全国サミットに出場、主体性と未来性が評価されて、全国約1,500プロジェクトの中から「高校生特別賞」に選ばれました。

全国高校生マイプロジェクト」とは、高校生や大学生自らが興味を持ったテーマに対して、課題発見とアクション(行動)やリフレクション(内省)を繰り返して探究していく学びのプログラムです。学生という枠を飛び越えて、”想い”のもとで自由にプロジェクトを形にしていきます。

 

蓮くんのマイプロ「Don’t stop music!」とは

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【Don’t Stop Music!】

これが松田蓮くんの高校時代に取り組んだマイプロジェクトです。

蓮くんが高校に進学したのは2020年4月。ちょうどコロナウイルスが蔓延し、最初の緊急事態宣言が発動されたときですね。

小さい頃から、家族の前で歌を歌ったり、ドラムやギターをはじめとした楽器を演奏することが大好きだった蓮くんは、コロナの影響で停止してしまった「音楽イベント」や「人との繋がり」に着目します。

コロナによって止まってしまった「音楽で人と繋がること」を復興させたい、と始まった【Don’t Stop Music!】

自らがライブを行うだけではなく、曲作りや歌うことを多くの人と共有し合うイベントを開催したり、さまざまなアクションで音楽による人とのつながりを作ろうと挑戦しました。

 

しかし、そんな中で後輩の不幸をきっかけに、「音楽」と「人の心理」に関心を持ち始めたそうです。
どうやったら人の心を癒す音楽と出会えるのか、心を癒す音楽とは何なのか。蓮くんの探究は大学に進学した現在も続いています。

今回注目したいのは、蓮くんのプロジェクトに対する取り組みだけではなく、「受験への繋がり」と「未完成でいい、マイプロジェクト」というポイントです。

マイプロジェクトというプログラムそのものに触れているかどうか以前に、夢中になれるものを探究する姿勢の一例として、蓮くんの経験に触れてみてください。

 

「自らの音楽活動」これもマイプロジェクトそのもの

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ー蓮くんは、なぜマイプロジェクトのスタートアップキャンプに参加したのでしょうか。

松田蓮くん:2年生の春に宮崎先生が授業の中で、マイプロ全国サミットの映像をみんなに見せてくれたんです。

僕は1年生の終わり頃から友人とクリエイター団体を立ち上げており、自分たちで主体性をもって芸術活動を広げていこうとしており、ちょうど土壌を探していた時期でもあったんです。

ですから、宮崎先生のマイプロのお話を聞いて、自分たちの活動をどのくらい世の社会で広げていけるのか、試してみようと思ってスタートアップキャンプに参加しました。

 

ースタートアップキャンプから、蓮くんの​​マイプロジェクトはどう動き出したのでしょうか。

松田蓮くん:スタートアップキャンプで知り合った大学生の方から、西蒲区の「いわむロックフェスティバル」のオーディションがあるから参加してみてはどうかと誘われて、参加したところ合格をいただき、ステージに立つことができました。これが、2年生の時に行ったマイプロジェクトとしてのアクションの第一歩でした。
そこからライブハウスを回り、自分の音楽を伝える活動をしました。ステージに立ちはじめたことで、色んな新潟の音楽関係の方とつながりを得て、話す機会を得ることもできました。

 

ー部活動があったりして、普段は忙しくなかったのですか?

松田蓮くん:結構忙しかったですね。1年生の頃は吹奏楽部と演劇部を兼部していたので、大変さはありましたが、タスク管理や時間管理が習慣付いたのでむしろ良かったと思っています。2年生になってからは演劇部に専念したのですが、その傍らでマイプロジェクトに取り組んでいました。

吹奏楽も、演劇も、マイプロジェクトも、自分が好きな「音楽」に関わる活動だったので、楽しかったですね。

そんな中、演劇部で出会った友人に僕が作曲してきた曲を聞かせてみたら、とても褒めてくれて「これは外に出していくべきだ」と背中を押されました。彼が映像編集を手伝ってくれだした時から、僕らの表現活動が始まって、マイプロジェクトにも演劇部の活動にも繋がっていきました。
なので、いくつかのところに所属していましたが、やっていることや没頭していることはシンプルだったなと思っています。

 

気持ちのアツさで会場を魅了

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ーそんな蓮くんのマイプロジェクト、全国サミットではどんな点が評価されたのでしょうか?

松田蓮くん:僕の場合は、主体性や自分事として捉えている部分、音楽が本当に好きだという思いの強さだったりを受け取ってもらえたことで「高校生特別賞」をいただくことができました。

アクションも振り返りも、他のプロジェクトに比べてまだまだ発展途上だったのですが、音楽が好きという気持ちや音楽で社会を変えたいという気持ち、プレゼン力を認めてくださったんです。なので、プロジェクトの出来不出来よりも、僕にとっては思いの熱さが人に伝わったことに意義があると感じています。

最近はマイプロジェクトの後輩に接する機会があるときは、「自分の好きを大切に進んでいってほしい」と僕なりにアドバイスしています。

 

ー蓮くんは大学入試試験にもマイプロジェクトが役立ったみたいですが、具体的にどう役に立ったのか教えてもらえますか?

松田蓮くん:全国高校生マイプロジェクトアワード 全国Summit」で賞を獲った場合、提携大学の総合型選抜試験で書類選考が免除になったりします。僕はそれを利用して慶應義塾大学を受験し、有難いことに最終合格をいただきました。

書類が免除になっても必ず合格がいただけるわけではないので、二次試験(面接試験)までにはしっかり対策をしました。

慶応義塾大学のアドミッションポリシーや、学びたい教授がいらっしゃったのでその教授の研究を勉強したり、自分が提案できることを考えたり。新しい音楽の創造の形を考えて試作品を作ってみたりして。
それが、結局はマイプロジェクトの延長にもなっていました。Don’t Stop Music!につながってきます。

志望校を絞り込むまでは音楽大学や芸術大学をイメージしていたのですが、慶応義塾大学の環境情報学部には、新しい未知の音楽を創造する領域があるんです。それを知って、さらに学びたい教授の存在も知って強い憧れを抱きました。
僕が大学で学ぶ目的は、誰も知らない美しい音楽をつくりたい、それを知りたいからで、理論よりもパッションで音楽をつくれる場所を探していたんです。

 

蓮くんにとっての音楽とは

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ー蓮くんは、いつからどうしてそんなに音楽が好きになったのでしょう?

松田蓮くん:幼少期から歌を歌ったり、Wiiの音楽ゲームをプレイしたりしていました。

本格的に音楽を始めたきっかけは、関ジャニ∞の大倉忠義さんです。楽器を演奏する姿に憧れて、ドラムを始めたのが小学1年生の時です。
それから楽器屋さんのレッスン教室でドラムのレッスンを受けるようになりました。

音楽ゲームをしていたおかげで、ドラム以外にもピアノとかギターとかマリンバなどの色んな楽器を覚えることができた気がします。また、僕の地元は新潟市西区の中野小屋という地域で、小・中学校どっちも全校生徒50人くらいの限界集落です。
この地域は米の収穫が盛んなので緑の田んぼでいっぱいで、僕の家も農家をしています。
そんな環境で生まれ育っているので、近所への騒音なども気にせずにドラムやギターの練習ができたことも、今に影響していることだと思います。

 

ー小学生の頃から曲を作っていたんですよね?

松田蓮くん:そうです。小学校5、6年生から曲を作り始めていて、何かを生み出すことが好きだったんです。

うちは母子家庭で、曽祖母と祖父母と母の5人で暮らしているのですが、昔から僕のやりたいことはほとんどやらせてくれました。家の周りが田んぼだらけでどれだけ音を出しても構わない環境だったこともあり、怒られたりすることはなくて、むしろ応援しながらみんな楽しんでくれていた気がします。家族や地域の存在があっての自分なんだと思います。

 

生まれ育った土地の美しさを、音楽で伝える

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ー蓮くんとお話をしていると、私が思う「音楽」よりも、もっと広義のものを指しているような気がします。蓮くんにとっての「音楽」とは、なんですか?

松田蓮くん:僕はずっと歌うことや演奏することが好きだったんです。曲を作ることも、楽しい遊びとしてやっていました。
それが高校に入り、友人やマイプロジェクトのお陰で自分と音楽の関係性を世の中に表現していくようになりました。

しかし、少しすると次第に「リスナー中心の音楽」になりすぎているようになり、僕自身の「好きな気持ち」がわからなくなっていった気がしたんです。

僕にとっての音楽って何なのかを改めて考えていた頃に、生まれ育った中野小屋の自然の美しさは人の心に響くものがあるように感じたんです。これまでの自分の人生の中で「美しい」と感じた出来事、音楽、体験を超える「美しさ」を音楽で創造したいと改めて思いました。

だから、私の音楽を誰も聴かなくなったとしても、私は私の目的のために音楽を書き続けると思うし、それがいつでも心の奥底にずっと眠っていると思います。

いつか、人生でいちばん「美しい」音楽を創れたら、もう何も思い残すことはないな、と思っています。

 

ー将来的には、どのように音楽に携わっていきたいのか、思い描いているものがあったら教えてください。

松田蓮くん:音楽は作り続けていきたいです。それが仕事になるかはわからないですが、あまり職業としてこだわりは持っていません。

一方で、音楽と人との関係などを探究や研究していきたいとも思っているのですが、これはより専門的にも職業的にも取り組んでいきたいと思っていることです。何の職業かは、よくわからないのですが。それを大学で学んでいきたいですね。

生意気な言い方になってしまいますが、「音楽家」でもありたいですし、「新しい音楽の可能性を広げる研究家」にもなりたいなと思い描いています。

 

***

 

「探究学習プログラム、マイプロジェクト」これだけを聞くと、いかにも世のためになる探究をしなければいけないように感じてしまう方もいるかもしれません。
しかし、意識せずとも主体的な取り組みや探究をしている方々は大勢います。
あなたが夢中になっていること、それこそが「マイプロジェクト」です。

 

予測不能なVUCA時代、「夢中になれることへの探究」は人工知能にはできません。
niigatabaseでは、他にも多様な方々の「夢中」を紹介しています。
それぞれのストーリーから、あなたらしい生き方をぜひ見つけてみてください。

 

 

松田 蓮さん
まつだ れん|大学生


2005年生まれ、新潟県新潟市出身。慶應義塾大学環境情報学部在学中。専攻分野は音楽。小学3年生から作曲をはじめ、高校卒業時には200曲以上を制作。2021年から「信長蓮」として音楽家の活動を開始。沈み込むような深いグルーヴに、カルテットを踏襲した弦楽器の音を練りこむ、緻密で澄明な音作りが特徴。自身の音楽への愛を探究した、「Don’t Stop Music!」で「全国高校生マイプロジェクトアワード 全国summit2021」、「高校生特別賞」を受賞。2022年3月、17年間の音楽への愛と、これまでに出会った人々のつながりを春の夜空に輝く北斗七星になぞらえたアルバム、「北斗十七星」をリリース。大学では音楽を制作しながら、新たな音楽の可能性を探究し続ける18歳。

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