TOMPLA藤本高史さんの挑戦!ドローンが新潟の暮らしを支える【前編】

TOMPLA藤本高史さんサムネイル前編

最近、新潟の自然スポットを訪れると、必ずと言っていいほどドローンで空撮を楽しんでいる人を見かけます。
レーシングドローンの大会があったり、小学生もドローンを操縦して遊んでいたり、一部ではドローンが生活に浸透しつつありますよね。

しかし一方で、「規制が多そう」「何だかよくわからない」といった声を聞くことも。つまり、現状の社会でドローンは“その楽しさを知っている人は、どっぷり浸かってしまう。知らない人は、違う世界のことのように思う”という位置にいるような気がします。

そんな二面性を持つドローンですが、ドローンを浸透させていき、暮らしを支える存在へと近づけていきたいと挑戦している人がいます。

地上を走らない分、車よりも早く、走行時にガソリンも使わないドローン宅配を新潟の地から、全国に浸透させていく。そんなビジョンを掲げているのが、株式会社TOMPLA代表の藤本高史さんです。

藤本さんが伝えたい「すぐ目の前まで来ている、ドローンと共にある世界」をたくさん伺ってきました。
あなたの固定概念が覆され、未来にワクワクしてしまう。そんな記事になっています。

新しいビジネスチャンスを見つけたいと思っている人は、ぜひ読んでみてください!

 

株式会社TOMPLAとは

TOMPLAロゴ

株式会社TOMPLAは、コロナ禍で設立された、県内ではまだ珍しいギルド型組織*1の会社です。社員の多くが副業や兼業をしており、業務委託も多い。本社を新潟市に構えつつ、それぞれの居住地は東京や北海道などとバラバラです。労働契約の下で働くのではなく、それぞれが発揮したスキルに対して報酬が発生するという考え方です。
*1 ギルド型組織・・プロフェッショナルな人材が、それぞれのスキルを持ち寄るスタイルのこと

現在のドローン市場は、実証実験フェーズと言われており、実用化するための法律や制度もまだ整備中です。しかし、2022年12月までには、法改正の内容が決定し、整備が進むとされています。

TOMPLAの事業は大きく分けて3つ。

まずはドローン宅配事業。現在フードデリバリーのスタッフが注文した商品を届けてくれるように、注文した商品をドローンがお客様の元に届けてくれる事業。

次にポート設置事業。ドローンが離発着するためのポートを作って、適応させていく事業。

最後にオペレーター育成事業。宅配などに活用されるドローンは、よくある撮影用ドローンとは違い、ラジコンのような近距離操縦はしません。基本的には遠隔でのPC操作によって管理されます。そうなると、既存のドローンスクールによる講習内容とは求められる知識などが異なります。宅配用ドローンの運転に必要な技術や知識を提供し、オペレーターを育成します。

これら3つの事業を1つの会社から提供することによって、「ドローン宅配をやりたい」と考える事業主様などに一連のセットとして提供することができます。
現在のTOMPLAは、法改正を前にしてその枠組みを作っているフェーズにあります。

 

 

ドローンと生活を結ぶ事業は“空きピース”だった!?

荷物を運ぶ宅配ドローン

ー2021年3月に設立されたTOMPLAですが、設立までの経緯などを教えてください。

藤本さん:はい。実は2020年1月にインフラ企業が主催するビシネスアイデアコンテスト(以下、ビジコン)に、現在のTOMPLAメンバーと共に応募して準優勝を獲得しました。その後も、ドローンに関する知識を深め、色々と情報収集をする中で、会社を設立して事業をやっていけるんじゃないかという考えに至りました。

 

ーそもそもドローンに注目したのにはどんなきっかけや考えがあったのですか。

藤本さん:経緯はいくつかあるのですが、きっかけは「空」に空きスペースがたくさんあると気づいたことでした。コロナの影響で、ここ数年は家で過ごす時間がとても増えましたよね。私はマンションの13階に住んでいるのですが、窓からの景色はとても見晴らしが良いので、ぼーっとベランダから外を眺めることがよくあります(笑)

13階の高さから外を見ると、マンションやビルの屋上には、活用されていないスペースがたくさんあると気がつきます。屋上スペースと、そのすぐ上の上空スペースはガラ空きじゃないか。ここを行き来して有効活用できるものは何かと、探るような意識は持っていたんです。

今、アメリカのシリコンバレーにある企業たちの熱い視線は宇宙空間に向けられています。でも、スペースシャトルや飛行機よりも下、鳥が飛ぶ高さの上空スペースは空いているそこを飛ぶものは、ドローンこれからはドローンの世界が面白いんじゃないか?という発想で、僕の興味はドローンに辿り着きました。

 

ー異業種への挑戦ですね。当時の藤本さんにドローンの専門知識はあったのでしょうか。

藤本さん:ほとんどないです。でもビジコンに向けたリサーチと分析をしていて、ドローン市場にはプロダクトアウト的*2なアプローチをする企業が多いと感じていました。ドローンには法律上の規制がまだ多く、お客様の声が製品づくりに与える影響力は大きくありません。だから、メーカーが作れるもの、できることを市場に卸すというアプローチになりがちです。
*2 プロダクトアウト・・会社の方針や作りたいもの、作れるものを基準に商品開発を行うこと

しかし、法改正することが決定している今、プロダクトアウトではなくマーケットイン*3の視点で、サービスを展開していくべきだという考えに。そこにこそ、自分達が参入できる隙間があると大きな可能性を見つけていました。
*3 マーケットイン・・顧客の意見・ニーズを汲みとって製品開発を行うこと

ドローン市場にマーケットインのサービスを展開しようという考えから、「想像し得る未来に暮らしをもっと近づける」という企業ミッションに繋がったんです。

つまり、TOMPLAはドローンの性能を極めるエンジニア集団ではなく、ドローンを暮らしに近づけるための総合的なプロデュース集団なのです。

ーということは、ドローンの製造はやっていないのでしょうか。

藤本さん:やっていないです。既成の機体に、我々が必要とする機能を後付けで搭載することはしていますが、作って売る基本的な製造販売はしていません。

 

各分野のスペシャリストが在籍!

ーTOMPLAにはどんなメンバーが在籍しているのでしょうか。

藤本さん:主なマネジメントメンバーは5人います。

まず、私の前職である医薬品メーカーにて出会った、元同僚であるマーケター。マーケティング業界に16年おり、世界的メーカーのコンシューマーマーケティングをやってきた人材。

航空会社で航空整備士をやった後に、パイロットの操縦マニュアルや空路設計をやっていた人材。

財閥系の重工業メーカーで日本初の国産旅客機を作っていたエンジニア。エンジン開発とか安全性解析とかを担当していました。現在は民間旅客機のパイロットとTOMPLAを兼業している人材。など、バラエティ豊かな顔ぶれが揃っています

マネジメントメンバー以外は、ドローンの開発技術者、デザインのクリエイター、M&Aに強いアドバイザーなど。
メンバーは1人ひとり、私が口説き落として集まってもらいました。

 

新潟の冬空を越せたドローンはどこでもやっていける

TOMPLA実証実験信濃川スターバックス

ーなぜ新潟で会社登記をしたのですか。

藤本さん:ドローン事業は自治体との連携が不可欠なビジネスです。会社の登記場所であり最初にサービス展開していくために最適な地域を探していたところ、行政特区になっている新潟市が候補に挙がりました。

新潟市は農業分野での国家戦略特区であり、農業用ドローンが活用されていたりもします。しかし宅配用ドローンにはまだ踏み込んでいない。そこがポイントでしたね。もちろん起業支援の手厚さも魅力でした。

さらに地形をみると、街の商圏を信濃川が大きく分断しています。信濃川をドローンレーンとして新しい物流ネットワークを敷くことができたら、とても大きな役目を果たすのではと期待できました。

実際に会社が設立してすぐに、新潟市とは実証実験などを行ったりしていて、受け入れられやすく、かつ後押ししてくれるカルチャーを感じる都市でしたね。

 

ー新潟の冬は天気が荒れるからドローンとの相性は悪いのかと思ってました。

藤本さん:そうですね。相性が悪いことは悪いんですけど(笑)そもそも日本全国、一年中晴れている地域はないですからね。むしろ新潟は冬に悪天候が続きますが、それ以外は安定している気候だと思います。そして、条件の悪い地域でうまくいけば他の地域のどこでも展開していけるという逆アプローチ的な考えもありました。新潟の冬を越せたらどこでもやっていけるという発想です(笑)

 

ドローンが物流を支える未来は、確実にやってくる

ードローンの未来について教えてください。

藤本さん:今、2025年の大阪万博でエアモビリティ(空飛ぶ車)が飛び出すと言われています。国はそんな未来を作ろうとしているんです。そう遠くない将来、空飛ぶ車が飛び交う光景が当たり前になろうとしている。だから、ドローンが空を飛び交って物流を支える未来は、「来るかもしれない」ではなく、来るんです。TOMPLAは「来るか来ないか」ではなく「来たる未来の、安全性や機能性を1日でも早く敷けるか」ということに重きをおいています。

実際、オーストラリアやアメリカでは、Googleの子会社などが人口30万人規模の都市で宅配ドローンを実用化させ始めています。今後は日本でも、同じようにサービス展開されていくでしょう。

近い将来、足の不自由な高齢者にも、ドカ雪が降った翌朝の新潟にも、欲しいものがドローンによって自宅に届けられるようになり、そんな光景が当たり前な世の中になるのだろうと思っています。

 

***

 

未来に向けた新たな挑戦が、この新潟から動きだすという話には、取材をしている私自身とてもワクワクさせていただきました。

さて、本記事の続編では、新潟に縁もゆかりもなかった、かつドローンの専門知識もなかった藤本高史さんがどんな考えでキャリアを形成してきたのかを紹介します。
新しいことに挑戦したいけど、事前準備ができずに結局動き出せなかった」といった経験がある方にはぜひ読んでいただきたい記事です。

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新潟ドローンデリバリーサムネイル

 

藤本高史さん
ふじもと たかふみ|起業家


北海道北見市出身。静岡大学農学部卒業後、香料メーカーにて地方中小〜大手企業まで幅広い規模の企業への商品コンサルに従事。
中小企業の地域性に応じた事業課題に触れる。2016年よりOTC医薬品メーカーのマーケティング職に従事後、人材系メディア企業で物流事業者等への業務支援サービス開発を主導。労働集約型企業の抱える慢性的な人材不足に触れる中で、人材の労働自体を再定義するドローン産業に出会い、2021年3月にドローン物流を促進させる株式会社TOMPLAを創業。
TOMPLA株式会社HP:https://www.tompla.tokyo/