「スーパーの異端児になる」マスヤ味方店の店長レナさんが辿り着いたキャリア軸とは

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スーパーマーケットと聞いて、どんなイメージを持ちますか?

誰しも日常的に使っていますが、どのスーパーでも同じ感じがしちゃいますよね。

一人暮らしの学生ライターの私も、どこのスーパーに行くかとなると、値段と規模と家からの距離しか考えていません。

そんなスーパー業界に新たな旋風を巻き起こしているのが、マスヤ味方店の店長、栗林礼奈さん。

店頭には全国から掘り出してきた名品が並び、情報発信はSNSで。新たなスーパーの形を生み出している礼奈さんですが、実家の家業を継ぐまでには紆余曲折あったようで…

「仕事」について考えながら向き合ってきた人生から、これからの展望まで、お話を伺います。

 

本当に大切な軸を求めて

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ー高校卒業を機に新潟を出て、京都の大学に進んだそうですね。

栗林礼奈さん:学生時代の修学旅行のときから、関西に憧れがあったんです。一方で仕事は、キラキラしたイメージのある東京でしてみたいと思っていて。だから、大学は関西への進学を希望して、ちょうどやりたいことが学べる大学が京都にあったので、立命館大学に進学しました。大学では社会学を専攻して、人気のまちづくりゼミに入り、日本で一番長くまちづくりに力を入れている神戸市長田区に通いました。

関西の人は思ったことをそのまま口にする人が多くて、初めは傷つきましたね(笑)
徐々に慣れていったのですが、おかげでメンタルは鍛えられたと思います。

 

ーそして就活をして、東京に行かれたんですね。

栗林礼奈さん:誰もが知っている会社に行くことがいいことのような空気があったので、業種・業界を問わず、とりあえず有名企業にエントリーシートを出した感じでした。その中でご縁があった会社に入社し、東京勤務の希望が通って上京できることに。

新卒では大手人材会社に入社して、ミドル層向け転職サイトの営業を約3年間やっていました。入社のときは、自分の成長を就活の軸にしていて、仕事を通して人間性を磨くことに魅力を感じていたのですが、働き出してからプライベートを含めた将来のことを考えたときに、転職を意識するようになったんです。

そこで、新卒での就活で最終面接まで進んだソフトウェア企業に面接をお願いして、転職が決まりました。その時の軸は、収入とワークライフバランスに変わっていましたね

ただ、確かに収入は良かったものの、興味が持てないIT業界にいることには限界があり。入社して2、3年すると、ある程度の成果を上げられるようにはなりましたが、自分を活かせている感覚が全くなかったんです。そこでまた仕事選びの軸が変わり、今度は収入に関わらず好きなことをしたいと考えるようになりました。そして、オーストラリアでのワーキングホリデーを決めて、会社を退職し、家も退去したんです。

 

ー思い切った方向転換ですね!

栗林礼奈さん:ですが、コロナの影響で、行けなくなってしまって。

どうしようもないので、一旦新潟に帰ることにしました。でも、このまま新潟でどこかの会社に就職しては東京でしていたことと変わらなくなってしまうので、「好きなことをするリフレッシュ期間にしよう」と決めました。それで実家のスーパーを手伝い始めたのですが、その仕事が楽しくて。迷いながらも入社することにしたんです。働きながら、今後どうするか決めようと思っていました。

コロナの影響もあり、当時は今より来客が少なく、経営的にも厳しかったですね。
ただ、外食が禁じられたことで自宅で食べる人が多くなっていたので、コロナ前と比べて売り上げが激しく落ち込んだわけではありませんでした。

 

「スーパーの異端児」になる

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ー礼奈さんならではの個性的なスーパーの展開をし始めたのは、いつごろからですか?

栗林礼奈さん:お店のインスタグラムアカウントを開設した、2021年6月くらいからですね。正式に正社員として働く決意をしたのと、同じタイミングでした。新卒で入った会社で、「人を1人採用するコストに値する価値を生み出さなければならない」と言われてきたので、自分が何かをしなくてはならないと思ったんですね。

店長になったのはその約1年後です。自分のやってきたことの成果が、売上や来店数で目に見えてきて、それを認めてもらって店長になりました。今は父が社長で、父の兄がもう一店舗の店長をしています。

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ーどのような考えで、個性的なスーパーを目指し始めたのでしょうか。

栗林礼奈さん:実はここから少し進むと、大手スーパーがいくつもあるんです。私たちのような個人商店がお客さんを獲得するためには、工夫が欠かせません。

まずは成功している個人商店から学ぼうと、父の人脈を頼りに五泉のエスマートの店長さんにお話を聞いたところ、遠方からの来客を促すための施策に力を入れているということを知りました。そこで、やはり少し離れたところの方にまで知ってもらい、行きたいと思ってもらえる環境を整えようと決めました。

なので、1年目はその土台となる魅力的な環境を整えること、2年目にはメディア進出を目標にしたんです。2年目の昨年は、実際にテレビや雑誌、ラジオに取り上げていただきました。

そして3年目となる今年のテーマは、コラボレーションです。既にいくつかコラボイベントの開催や出店も行いましたし、今後も予定しています。今年はスーパーらしくない新たなチャレンジをしていく予定です!

 

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ー個性的な商品が多いことが魅力ですが、仕入れはどのように決めているんですか?

栗林礼奈さん:全国から、その土地でしか買えないような珍しい商品を入れるようにしていますね。気に入ったものは、本来販売していないものでも直接電話で交渉して仕入れますし、実際に色々と食べ比べます。試食しながら良いキャッチフレーズが思い浮かばなければ、採用しません

例えば去年の夏、めんつゆがとても売れたのですが、そのキャッチコピーは「今年の夏、そうめんがごちそうになる」でした。チラシに書いたらものすごく反響がありましたよ。

私もそのめんつゆはお気に入りで、お客さんにも好評でした。私自身が気に入ったものしか置いていないので、ここのお店は私の冷蔵庫の延長線上にあるような感じです

高価なものを店頭に並べるのは勇気がいりますが、いつも利用してくださるお客さんは、たとえ高くても、美味しいものならリピートしてくれるんですよね。大事なことは、お客さんが購入する初めの機会を作るために、お客さんの信頼を勝ち取ることだと思います。嘘はつかず、本当に美味しいと思ったものだけを並べています。信用は積み重ねですからね。

 

天職は、すぐ目の前にあった

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ー新潟に帰ってきたことは、人生の好転機になったと思いますか?

栗林礼奈さん:そうですね!
子供のころから、休みなく忙しそうに働く父母の姿を見て、「実家のスーパーの仕事にだけは就きたくない!」「田舎を出て東京でバリバリ働くんだ!」と思っていました。そのために大学受験や就活も頑張ったんです。

でも、途中で自分には合ってないと感じて、新潟に帰ってきてみたら、目の前にあった天職に出会えました。東京で一度「違うな」と思う経験をしたからこそ良かったのかもしれません。
自分の好きなこと、かつ得意なことを仕事にできたら、こんなに周りの人に喜んでもらえるんだって気が付きました。公私ともに、新潟に帰ってきてからのほうが幸せな生活を送れています。

 

栗林礼奈さん
くりばやし れな|経営者


1991年生まれ、新潟市南区味方出身。立命館大学に進学後、東京で就職。人材業界、IT業界を経験し、脱サラ。現在は家業のスーパーマーケットである【マスヤ味方店】の店長。SNSでの発信や全国のおいしいものを開拓するなど、個性的で魅力的な店舗へと成長させた。

【マスヤ味方店】
〒950-1261 新潟市南区味方103-1
営業時間 9:30 ~ 19:30(日・祝のみ 〜19:00)
定休日 毎週水曜