欠点が自分を突出させる!柏崎の実業家、西村遼平さんが教育とまちづくりに込める想いとは

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今回は、柏崎市内で”民間が作る公園”というコンセプトのもと作られたハコニワの中にある「kitchen 105」の代表、西村遼平さんに取材をしてきました。

オーナーシェフでありながら、全国初の教育委員会公認SDGsメンターとして年間50回以上、柏崎市内の中学校で授業を行っている西村さん。

西村さんのキャリアや活動を全てなぞろうとすると大変なことになりますので、それはまた追々(笑)

今回は、西村さんの”柏崎に対する想い”と”教育に対する想い”について、フォーカスを当てて取材してきました。

 

どうやったら柏崎に活気が戻ってくるのか

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ー柏崎市をフィールドに様々な事業を手がける西村さん。西村さんにとって「柏崎」とは「生まれ育ったまち」「慣れ親しんだ故郷」以外では、どんな場所ですか?

西村遼平さん:僕は商店街で生まれ育ったので、徐々に活気がなくなっていくのを肌で感じていました。中学生のころから、まちの将来に危機感をもっていたので、そういった意味でのフィールドですね。

商店街の店舗は自宅も兼ねていることが多いので、お店を閉めると、そこに住む人もいなくなるんです。小さいころから、気が付いたら近所の友達や、一緒に遊んでくれたお兄さん・お姉さんがいなくなっている経験をしてきました。

また、両親が自営業をしており、その苦労も目にしていたので、危機感を持ちやすかったんだと思います。

 

ー中学生の頃からまちづくりへの興味があったんですね。その頃は、まちの変化に対してどんなふうに向き合ったのでしょう?

西村遼平さん:中学生なりに考えて、観光地を作ろうともしましたよ。この町に元気がないのは、町に観光地がなくて、人が来ないことが原因だと思ったので。

まちに人を呼ぶには観光地を作るしかないと考えて、タンポポの丘を作ろうとしました。毎日、タンポポの綿毛を丘の上まで持って行って、一生懸命種を飛ばして回ってましたね(笑)

雑草として刈られてしまったので、結局タンポポの丘は見られなかったんですけど、一つ良かったことがあって。

友達が興味を持ってくれて、「観光地を作ってる」と話したら、面白がって一緒にやってくれたんです。男子中学生がぞろぞろと、毎日タンポポの綿毛を吹いて歩いてました(笑)

その時に、「どんな馬鹿なことでも、一生懸命やっていたら誰かが見ていてくれるし、応援してくれるんだな」と実感できたんです。今思えば、この経験が後の人生に大きな影響を与えているのだと思いますね。

「kitchen 105」も、8割近くが市外からのお客様です。だから僕のやっていることは、中2 から変わってないんです。ずっと、どうやってまちに人を呼ぶかを考え続けているのだと思います。

 

欠落部分が自分の武器を突出させる

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ー西村さんは、幼い頃からずっと活動的だったのですか?学校での様子などが気になります。

西村遼平さん:学校では集中力がなくて、周りの誰よりも寝てました(笑)
今でも実は、興味が湧かないと集中して聞いていられません。アドレナリンが出ていないとすぐに眠くなっちゃいます。一方で、相手に熱量があると、その影響を受けやすかったりするんですよね。

活動的な性格でしたが、成績は悪い方でした。勉強がつまらなくなって、聞いていないから分からなくなって、さらにつまらなくなるという負のスパイラルに入っていましたね。

でも、興味を持ったことは徹底的に調べていました。探究心はあるけど、興味がないことに対しては全く頑張れない、極端な学生だったと思います。

当時の僕を擁護するわけではないですが、全ての能力を均等に伸ばすより、欠けた部分があってもいいから、どこか突出した部分をつくることが大事だと思うんです。
平らに均すのではなく、そのまま伸ばしてあげられる教育ができたらいいな、と思います。

例えば僕は、僕自身が飽きやすいから、伝わりやすくて飽きさせない伝え方を意識しています。それは幼いころからそうでしたし、大人になった今は、自分の強みになっています。そんなふうに、欠落があることも大事になってくると思うんですよね。

 

ー「人に伝える」ことの重要性に、早い段階で気づいていたんですね。

西村遼平さん:そうだと思います。小学校くらいから意識していたかもしれません。
僕は、細分化と定量化ができると、再現性が増すと思っています。だから、どれだけわかりやすく誰もがわかる基準で分析できるかが、再現性の鍵になってくるんですね。

例えば飲食店なら、「いいお店」を目指すとして、どんな要素があるのか。いいサービスとはどんなサービスで、どのタイミングで何をすることなのか。言葉にできることができたら、マニュアル化もできますよね。

つまり、言語化ができたら、それを再現できるということだと思うんです。僕は料理や盛り付けにも、自分の中で「美味しさ」の方程式を持っています。それくらい、言語化が事業の肝だと考えています。

 

学校と社会、求められることが違う

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ー柏崎の中学校で、起業学習プログラムの授業を行っている西村さんですが、子どもたちの教育に取り組むようになった理由はなんですか?

西村遼平さん:僕自身が、将来に対して希望を持てない学生だったからです。

物心ついた頃から、仕事を終えて晩酌をしている大人たちからは、会社の愚痴か、家庭の不満か、健康の不安しか聞いてこなかった印象があって(笑)それでは、大人になることに希望を持てるわけがないですよね(笑)

子どもたちが仕事に対して前向きになれないのは、大人のせいだと思うんです。周りの大人が楽しそうなら、子どもたちもああなりたい、と思えるはずですよね。人生を楽しそうに生きることは、子どもたちに対する大人の責任だと思っています。余暇だけでなく、できれば仕事についても、そうであってほしいですね。

 

ー西村さんは子どもたちに教育することで、どのような変化を期待しているのでしょうか。

西村遼平さん:授業を通して、アントレプレナーシップ(起業家精神)や、マネーリテラシーの育成ができると思います。加えて、定住率の向上にも繋がると考えています。

子どもたちが地域の中でいろいろなことを経験しないと、その地域に残る選択肢が生まれないままだと思うんですよね。この授業を通して、地域の現状や課題、これからのことを考えてもらうことで、地域に愛着をもって、何か後ろ髪を引かれるような、きっかけになればと思います。

また、5教科以外のことが評価される機会になることにも、大きなメリットがあると思います。勉強が苦手でも、輝く可能性があるということを感じてほしいです。

僕は、学校教育と実際の社会では求められることのギャップが大きいと思っています。この授業が、学校と社会をつなぐステップになることも期待しています。

他にも多くのメリットがある教育プログラムだと思うので、全国的に、もっと広げていきたいですね。

 

ーそもそも学校に関わるようになったきっかけはなんだったのでしょう。

西村遼平さん:この教育プログラムは、僕と、同世代の経営者たちの4人で立ち上げました。元々その4人は、お酒を飲みながらいろんな社会課題に対してブレストしたり、越境ツアーと称して、各地の素晴らしいビジネスモデルを学びに遠出したりする仲だったんです。

ちょうど7・8年前にSDGsが意識され始めたころ、僕ら4人が東京のSDGs勉強会イベントに招待されたんです。そこで刺激をもらったことが、今の取り組みに繋がりました。まちや社会を良くしていくために、どれだけ教育が重要かを、再認識させられたんです。

そのイベントの帰り道に、教育を変えるしかないと決めて、構想を練りました。その時に描いたことが一つ一つ形になり、今に至ります。

 

疲れた大人を見て「あゝなりたい」とは思わない

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ーご自身の子育てについてはどう考えていますか?

西村遼平さん:「大人が輝けば、子どもが輝く。子どもが輝けば、未来が輝く」というのが、僕が理事の1人を勤める居酒屋甲子園のビジョンとして掲げられているのですが、その通りだと思っています。

なので、極力子どもを自由にさせることと、自分が楽しそうにすること、そして一生懸命働くということを意識しています。

例えば僕は今、仕事も家ならリビングでやることにしています。すると、子どもも隣で勉強を始めるんです。楽しそうな様子を見ていたら、一緒にやりたくなるのは当然ですよね。一緒に頑張ろうって声をかけるだけで、子どもの勉強に向かう姿勢は大きく変わると思います。

あとは、苦しいことも含めて、色んな体験をさせてあげることは大事だと思っています。感情が揺さぶられる経験はしておくべきです。怒って泣いて、成長してくれればと思います。

 

「挑戦してもいい、できる」という環境作り

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ーこれから西村さんが目指す、まちの姿とは、どのようなものなのでしょう。

西村遼平さん:応援し合える空気感があることが、一番大事だと思っています。

その空気感がないと、どれだけ素晴らしい挑戦をする人が現れても潰れてしまうし、そもそも始めようという気持ちにもなりづらいですよね。なので、「やっていい」という安心感をまちにつくりたいと思います。大体の挑戦は、例え失敗しようが死ぬほどの致命傷を負うことってあんまりないので、みんなが気軽に挑戦できるようになれば、と思っています。

これに大きく関わるのが、幼少期のマインドセットだと思うんですね。「メンタルヴィゴラス状態」と呼ばれる、思考やイメージ、感情が全て前向きになっている脳の状態があるのですが、僕は、子どもたちがこの状態になるべきだと思っています。子どもたちが未来を思い描いたときに、「何にでもなれる・何でもできる」と思える状態が理想ではないでしょうか。いかに子どもたちにそう思わせるかが大事で、それが大人の仕事だと思います。

 

ー最後に、若者へメッセージをお願いします!

西村遼平さん:「VUCA」と言われる今とこれからの時代ですが、これを勝手に暗く感じて未来を憂るのはもったいないです。不透明な未来だからこそ、どんなことでもできると思います。だから、そのために”自分の能力向上”と”友人を大切に”ということを特に意識することを進めます。
1人の努力には限界がありますが、コミュニティは広がる可能性があります。だから、友達を大事にしてほしいです。

また、自分とその周囲の人のレベルは自然と同じになるので、自分を高めることが、自分が繋がる人が高まるってことです。これが僕の思う、勉強する理由です。ガミガミ「勉強しろ」と言うだけでなく、なんで勉強するのかを、大人は伝えなきゃいけないと思いますね。

VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語で、「先行きが不透明で将来の予測が困難な状態」を意味する。

 

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今回お話を伺ったのは、「kitchen105」のオーナーシェフ西村遼平さん。
柏崎や教育に対する”想い”にフォーカスして取材させていただきました。

実際に、柏崎ではどんな教育をされているの?
と気になった方もいるのではないでしょうか。

その内容については、今後また発信していくので、ぜひ楽しみにしていてください!

 

西村 遼平
にしむら りょうへい|経営者


柏崎市出身。高校を卒業後、他職を経験し料理人となり、現在は有限会社 la Luce e L’ombra代表取締役。2021年には「kitchen 105」をオープン。また、教育委員会公認SDGsメンターとして柏崎市の子供たちに授業を行う。他にも起業、経営の分野で活躍中。
kitchen105公式ホームページ:https://lucelombra.co.jp/kitchen105/