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「キツい」だけじゃない。庭園を継承する庭師の魅力とは

にわ彌

今、「庭師」とネット検索すると続いて出てくるワードは「仕事 辛い」や「年収 低い」などであり、庭師は一般的に「キツい職業」と認知されているようです。

今回はこの記事で、庭師のキツさを否定するつもりはありません。
しかし、そのキツさの奥にある魅力を皆さんにお伝えすることで、読者の頭にある「庭師」に対する考えを動かすきっかけになればと願っております。

記事制作にご協力、ご意見をくださったのは、長岡市で「にわ彌(niwaya)」を営む室橋拓弥さんです。

 

室橋拓弥さん
むろはし たくや|庭師


一級造園施工管理技士 / 一級造園技能士
1984年新潟県長岡市生まれ。東京農業大学造園科学科卒業。卒業後、東京赤坂で造園家・星野司郎氏に師事。多数の作庭業務に携わり、基本から庭づくりの伝統的技術を習得。新潟に戻り、地元の造園に触れながら公共事業にも携わり、工事及び管理業務の現場代理人を経験。2020年5月「にわ彌」として独立。長岡を拠点に活動し、新潟県内だけでなく冬季は関東へ出て日々庭師としての技術の向上と探究を続けている。

にわ彌公式HP:https://niwaya-nagaoka.jp/

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室橋拓弥さん

 

「庭師=きつい=担い手不足」本当にそれでいいのか


室橋拓弥さんは、庭師という職種について、こう語ってくださいました。

「庭師は派手な仕事ではないです。野外での作業はキツいことも多い。けど、この技術が不要になる時代はこない。職人の業界だから、アピール下手でなかなか若者も集まらないけど、自然の力、日本の文化を感じられる奥深い仕事です

室橋さんの祖父の時代までは、造園業も今よりかは景気が良く、大きな庭園を所有している方も多くいらしたそうです。
新潟のような積雪地域は、冬の間に庭仕事ができないことから、「冬季解雇」という仕組みをとっている造園業者も度々みられます。それでも一昔前は、冬の休業ダメージを賄えるほどの貯蓄ができていたりもしたそうです。

しかし近年の庭師の仕事というと、家族構成の変化等の理由でお庭を駐車スペースにしてしまうなど、実は庭を作ることよりも無くしたり、縮小することの方が多いとさえ言われています。(一部の現状であり、全ての庭師に該当するわけではありませんが。)

これでは日本文化や庭園、樹木が好きで庭師を目指した若者も、気持ちが他の職に移ってしまうでしょうし、環境保全の観点からみても正しい選択なのかは甚だ疑問です。

そんなことも影響して、庭師の担い手は年々減少し、高齢化が進んでいるのが現状

しかしその一方で、現代人の暮らしから植物そのものが排除されているわけではないとも感じます。コロナの流行によって、ガーデニング人気は一層高まっていますし、ワーケーションやアウトドアブームのように自然を肌で感じたい人だって増え続けています。
「チルアウト」という言葉をよく耳にするようになったのも、人との接触が制限されるようになった現代人が、自然に立ち返って癒しを求めはじめたことの象徴ではないでしょうか。

つまり、人は自然を求めている。なのに仕事には「どこでもできる、スマートなスタイル」を求めており、汗水たらして自然のお世話をすることからは目を逸らしている。そんな矛盾を感じます。

 

植物との暮らしに欠かせない庭師

樹木


庭師とは、室橋さんへの取材記事でも触れた通り庭全体のことを考えて、樹木や土壌を健康的に維持できるよう整えるお仕事です。木を切る行為ひとつとっても、ただ伸びたから切るのではありません。不要な枝葉を切って必要な部分に効果的に光を差し込ませ、全体に栄養が行き渡るように計算しています。

樹木だって人間と同じで、ただ雨風に吹かれて生かされているだけでは、病気にかかったり栄養が偏ったり、害虫からの攻撃を受けたりしてすぐに弱ってしまいます。当然それを支える土壌にだって良い影響は与えません。

樹木も病気や怪我をしたら治療が必要ですし、栄養が偏らないように日頃からケアする必要があります。

室橋さんは庭師をしていて、過去にこんな言葉を耳にしたそうです。
「この場所に枯葉が落ちるのが嫌なので、街路樹の枝を丸ごと切ってほしい」
「樹木は落ち葉やら冬囲いやら手間がかかって面倒」

確かに、その気持ちはよーくわかります。
私の父も、念願の庭園を手に入れた瞬間から、普段の仕事にプラスして庭の手入れにも追われるようになりました。そんな姿を見ていると、自分を癒す庭なのか、庭を癒す自分なのかわからないなと感じるんです(笑)
でも、本来そんな父の姿こそが、植物と暮らす人間の正しい姿なのでしょうね。
植物に恩恵を求めるならば、まずはこちらから始めるのが当然。

「植物も生き物です。それを認知していない人があまりにも多い」と室橋さんは話します。
手をかけて育て、共存していかなければいけません。

その大前提のもと、樹木や庭全体の手入れをする「庭師」の存在が価値化されています。

人が健やかな日常を作り出すためには、街路樹や公園の木々、庭の樹木は欠かせません。ならば、それを手入れする庭師の存在だって必要不可欠です

 

世界を魅了する日本庭園

アメリカのポートランド日本庭園
アメリカ・ポートランド日本庭園

海外にも日本庭園は数多く存在します。その数は、一般公開されているだけでも500以上にのぼり、100以上の国と地域に存在します。中でもアメリカのポートランド日本庭園は、1963年に当時の東京農業大学教授・戸野琢磨氏が設計し、現在は年間50万もの人が訪れると言われています。世界中の多くの人を魅了するその堂々たる姿は「息を飲むほど美しい」と称されているのだとか。

室橋さんは、このポートランド日本庭園を訪れた際、日本との“文化に対する価値観の違い”を感じたと言います。

「ポートランド日本庭園はその素晴らしさを維持するために州や政府が30億円を超える大金をかけ、約30年間に及ぶプロジェクトを進めています。その一環として日本の庭師が数年交代で現地に滞在して庭を整備するんです。

それ以外に、アメリカ人の庭師を育成するプログラムも手厚い補償が用意され、技術を習得した外国人庭師はガーデナーとして専門職に認定されます。

日本庭園を愛し、守り、関わっていきたいという方々は海外にもたくさんいます。そういった方々は、私自身も劣ってしまうほど、日本の文化に対して詳しかったりするんです。自分が恥ずかしくなるくらい。

予算規模からも、姿勢からも、文化に対する敬意を感じました」

 

庭師の魅力

日本文化の象徴でもある日本庭園。その技術の継承や保存に庭師の存在は欠かせません。しかし、庭師の仕事は日本庭園だけが現場ではありません。公共物、個人宅、海外など、多岐にわたるフィールドで活躍する庭師の魅力をまとめてみました。

 

 魅力その1 お客様の喜びを直に感じられる

庭師の仕事は、全てお客様からの依頼のもとに成り立っています。そのため、完成を目にしたお客様の反応などをそのまま直に受けることができ、何よりの喜びや励みにつながります。

 

 魅力その2 自身の感性を表現できる

基本的には、お客様の要望に沿って庭というフィールドに表現し、カタチにするのが庭師の役目。しかし、お客様の希望を聞き出す中で、ちょっとした提案ができるかどうかは庭師の知識と技術、感性次第。与えられた条件のなかで、いかに満足度の高い庭を作れるかは、全て庭師の手腕にかかっています。ある意味、その感性と技術でいかにお客様を魅了できるか。庭師であり芸術家として、仕事にやりがいを感じている方もいるでしょう。

 魅力その3 自分次第でどこまでも挑戦できる

前述の通り、庭師のフィールドは多岐にわたります。その技術ひとつで世界へ飛び出す庭師もいます。日本人の繊細さは、世界でも折り紙付きですから、自分のモチベーション次第でどんなフィールドにも飛び込んでいけることでしょう。

 

 

変化しつつある庭師

にわ彌2


さて、この記事では「庭師」という職業の必要性とその魅力を綴ってきました。私は冒頭「キツいだけじゃない、庭師の魅力を伝えたい」と述べましたが、最後におまけとして、私自身が想像する少し先の未来の庭師像も付け加えてみようと思います。

近年、働き方の多様化が進んだことで「職種」の括りも、その境界線が薄くなってきたように感じます。例えば、“半農半X”として農業を営みながら他の仕事をしていたり、会社の形態もギルド型のようなフリーランスチームのところが増えてきました。

庭師という職業の場合、樹木や石材の扱い、ハサミのいれ方など専門的な技術を頭と身体両方で習得する必要があるため、自由な働き方とは縁遠いイメージを抱きがちです。

しかし、私は今回この記事を書くにあたって庭師に対する様々な情報を目にしました。
印象深く残っているのは、こんな意見。

「庭師は日が昇っている間の作業であるため夜間作業がなく、残業などは少ない」
「庭師の仕事は、スケールこそ違うが趣味の庭仕事に活かせることが大きい」
「技術を習得すれば、どこでも働ける」

加えて、ガーデニングやアウトドアへの時代の流れを考えると、潜在的に庭師を志望する人や技術を求めている人は多いと思うのです。

また、造園業の求人を見ると「未経験者歓迎」や「学歴不問」が多くみられます。業界的には、全くの素人から丁寧に教え、育成していくことを得意としているように思います。

であれば、本職ではなくとも、より多くの人が庭師として活躍できる環境をつくることで、その繊細な技術を繋いでいけるのではないでしょうか。ひいては、日本文化に多くの方が慣れ親しむ、大切にする、敬意を以て守っていくことに繋がるのではないでしょうか。

“技術さえあればどこでも”をプラットフォームに集約する。などのアイディア次第で、これからも庭師の技術はいかようにも繋いでいけると思います。

ワーケーション先で作庭作業に参加してきた。
副業で庭師修行をしている。
ご近所に庭師の方がいるから、自宅の庭のちょっとしたことをすぐに相談できる。
駐車スペースにするのではなく、庭と暮らしたいと思った。

そんな声が聞ける未来を拓いていきたいですね。

日本庭園

 

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室橋拓弥さん
   
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