美しい自然や豊かな食文化をもつ新潟県。日本全国が抱える「少子高齢化」「人口減少」問題ですが、新潟県も同様にこれらの課題を抱えています。
県内で活躍する企業や人材を増やすきっかけになればと、新潟県はIT企業を中心とした企業誘致を進めています。そんな中、さまざまな業界で活躍している仕事人に直接相談ができるキャリアシェアサービスを展開している「shabell(シャベル)」が新潟県へ進出することに。
新潟県が抱える課題や、shabellと新潟県の出会い、そして誘致に至るまでにはどのような道のりがあったのでしょうか?新潟県東京事務所の佐藤圭祐さんと株式会社shabellの守岡一平代表に、shabellと新潟県が目指す今後について詳しくお聞きしました。
「新潟県で働く」という選択肢を知ってもらうために
ー新潟県の魅力や、現在抱えている課題について教えてください。
佐藤圭佑さん:新潟県は人口約218万人(令和3年11月現在)、面積は12,584km²と全国で5番目に大きな県です。県庁所在地の新潟市は交通の要所として発展しており、政令指定都市に制定されています。
農業が盛んで、特に全国的に有名な「コシヒカリ」などのお米の生産量は日本一(令和2年産)。海や山など自然に囲まれており、バラエティに富んだ美食を楽しめる県でもあります。また、新潟の日本酒もとても人気があり、酒蔵の数は全国一位。蔵によって味わいが異なるため、きっと自分の好みにあった日本酒に出会えますよ。
食文化だけではなく、夏は海、冬はスキーとレジャーも充実しています。
課題は、やはり「少子高齢化」や「人口減少」です。新潟県だけではなく全国的な問題ですが、この新潟県でも近年は毎年2万人以上の人口純減が続いています。
直近のデータでは、出生数と死亡数の差である人口の自然減は1.8万人ほど、他県への転出超過によって生じる社会減は6千人ほど。県としても人口減少を抑えるためさまざまな施策を行っていますが、一朝一夕にいくものではありません。企業誘致には、ミクロ的には社会減の鈍化に期待して取り組んでいます。
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ー新潟県が企業誘致を積極的に行っている理由は?
佐藤圭佑さん:実は、社会減のうち約8割が15歳~24歳という非常に若い世代。進学や就職で県外に転出する若い人が多いことがわかります。こうした若い人たちに「新潟で働く」という選択を少しでも多くしてもらうために、企業誘致に力を入れています。
さまざまな企業が新潟県へ進出することで、若い人の働く場所の確保をするとともに、新潟県で働くという選択肢をもっていただき、新潟県全体が盛り上がればと考えております。今回、守岡さんが代表を勤めるshabellさんを誘致したのもその取り組みのひとつといえます。
私たちが誘致した企業において、県民の皆様が満足いく報酬で生き生きと活躍され、そして、新潟県への進出を決断された経営者の方が、新潟に来てよかったと思っていただけることが、私たちにとっては最大の喜びです。
shabellを通し、夢を持っているすべての人に正しい情報を届けたい
ーshabellの企業理念やサービス内容について教えてください
守岡一平:一言であらわすと、shabellは夢を持っている人や地方在住で情報を得にくい人に、情報やアドバイスを届けるサービスです。
会社は、「社会貢献をして営利を得る」というのが私の考え方なんです。地方はどうしても情報が入りにくかったり、コネクションが作りにくかったりする背景があります。夢を持っている人を社会貢献という側面からどう支援するのかを考えとき、どこに住んでいても平等な情報や機会を得る必要があると感じました。
そこで生まれたのが、shabellです。shabellは、その道で活躍するプロが「シャベラー」として登録し、悩みを抱える方やその職業を目指している方にリアルな声やアドバイスを届けられるアプリになっています。
人は皆、当たり前のように仕事をして生活していますがそもそも仕事って始まりとしてはその人の夢であり、プライベートな部分ですよね。そのプライベートの部分である「夢」を手助けすることが社会貢献にもなると思ったのです。
ーshabellが新潟県進出を決意した理由はなんですか?
守岡一平:新潟県の影響力でしょうか。政令指定都市でもある新潟県は
「社会貢献をして営利を得る」という私の考え方に基づいている部分ですが、「社長」や「株式会社」というのは私物化するものではなく、公共のものに近づけていく必要があると思っているんです。
もちろん、私物化されている会社が悪いわけではありません。私たちshabellは会社というものを公に対してメッセージ発信基地と考えております。非常に大きな影響力をもっている新潟県と共にメッセージを発信できるのは、私たちにとってもとても良い機会だと感じています。
影響力の大きい新潟県で、社会貢献を
ー佐藤さん、守岡代表の両者へお聞きします。新潟県への進出の話が出てから、決定するまでどんな流れだったのでしょうか?
佐藤圭佑さん:昨年、新潟県に進出いただいたコンサルティング系の会社さんが、「地方進出に興味を持っている会社がある」とshabellさんを紹介してくださいました。それですぐ守岡さんへ連絡を取った次第です。
守岡一平:連絡をいただいたときは、shabellのサービスがはじまったばかりだったので、
「まさか政令指定都市がある新潟県から連絡が来るなんて!」と緊張したのを覚えていますね。shabellの詳しいサービス内容や私たちの理念を佐藤さんに説明させていただいたところ、佐藤さんも興味持っていただけて、すぐに現地視察が決まりました。
佐藤圭佑さん:webミーティングしてからすぐ、視察まで決まりましたね。9月末に視察ということで、新潟県へ来ていただきました。
守岡さんは民間の方ですが、社会貢献への意識を非常に持っている方。
視察では、新潟県の産業系部署と意見交換したり、新潟市の教育委員会の方と会う機会を設けたり、教育系NPO法人との連携ができるかを話し合ったりしました。
守岡一平:実は、新潟県進出はお話をいただいた時からすでに決めていました。そうなった以上、まずは新潟県を知って好きになろうという気持ちで視察へ向かいました。実際に訪れてみると、新潟県は食べ物もおいしいし、たいへん暮らしやすい。東京との距離感も近く、非常に魅力のある県だと感じましたね。
shabellを通じ、夢を叶えられるようなサポートをしていきたい
ー佐藤さんへお聞きします。なぜshabell社を企業誘致しようと考えたのでしょうか?
佐藤圭佑さん:企業誘致活動は、どの会社においても、新潟県に興味を持っていただけたらありがたいと思って活動しています。守岡さんと最初にお話ししたときに、守岡さんが掲げる理念やビジョン、shabellさんのアプリは、新潟県の地域課題の解決にもつながる可能性が高いと直感しました。
県外への人口流出の要因はたくさんありますが、「若い人にマッチした労働環境」や「若い人が働きたいと思う会社が少ない」というのも大きな要因ではないかと考えています。
このため、shabellさんのような会社に新潟に来ていただけるよう活動しているわけですが、現在の新潟にも魅力的な企業や産業はたくさんあります。
BtoB企業が多く、若い人になかなか知ってもらえていないという問題があるため、shabellさんのアプリを利用することで、キラリと光るものがあっても、発信力が弱く県内の若い人たちに存在が知られていない会社や産業と、県内の若い人たちとの橋渡しができるのではないかと期待しています。
shabellさんのアプリを通じ、シャベラーとして新潟県では働いている先輩方がお話をすることで、1人でも多くの人に「新潟県で働く」という選択肢を知ってもらえればと考えています。
今回は過去の取材で伺ってきたお話をまとめ、私なりの「移住するって何なの?」に対する考えをまとめてみました。 ちなみに、私自身は新潟へのUターン移住を経験しています。今の生活を自分ではとても気に入っているので、より多くの人に地方移住して[…]
ー最後に守岡代表へお聞きします。新潟県での使命、shabellのゴールとはなんでしょうか?
守岡一平:コロナの影響もあって、「人とつながる」「人の話を直接聞く」機会はどんどん減ってきています。shabellのサービスを通じ新潟県の仕事や新潟県の魅力をたくさん届けて、より多くに人の充実した人生を送り、夢を叶えられるようなサポートをしていければと強く願っています。
shabellが新潟で実際に行っている取り組みをご紹介
<shabell×新潟課題①>shabellアプリを通じて情報格差を改善する
地方だからチャンスがない、選択できる職業も生き方も限られている、そのような従来の価値観や慣習から、東京に行けば何かが見つかるのではと考え、上京や進学を選択する若者が数多く存在しています。
かつては、地方に住んでいることによって、得られる情報に偏りがあったり、接することができる人やコミュニティの種類にも数にも制限があったりしました。
しかしながら、ITの拡充やSNSの普及により、日本では誰もがどこにいても世界中に発信でき、あらゆる情報を得ることができるようになりました。この変化により表面的には情報格差は解消されたかに思えますが、実際はそうではありません。インターネット上に存在する情報は、その情報の出処や真偽を判断しにくく、進路やキャリアという重要な決断に活かすには不安があります。
shabellアプリは、自分の個人情報を明かすことなくアプリを通じて、自分が目指す職業やキャリアに就く人に直接相談できる、新しいツールです。周囲に相談できる人や同じような道を歩んでいる人がいなくとも、自分一人で悩む必要も無くなり、自分が望む未来を切り拓けるような支援ができればと思っています。
新潟にいても、みんなと違う生き方を選べる、自分にしかできない仕事を生み出せる。
新潟から世界を目指すことも、新潟でオンリーワンの職業に就くこともできる、shabellアプリの活用でそう信じて未来を描く若者をもっと増やしていければと考えています。
<shabell×新潟課題②>niigatabaseで新しい新潟らしさを発信する
新潟という地に根差し、自分の力で未来を切り拓き、新しい働き方や自分らしい生き方を追求する人や取り組み、コミュニティに関する情報をWEB記事として発信しています。
新潟には機会や選択肢が少ないと感じ、東京に進学・就職を望む若者がいる一方で、新潟固有の魅力や産業を広げる仕事に就く人がいたり。新潟の課題に取り組むべく、新たな事業を興す人がいたり、従来の働き方にとらわれず自分のライフスタイルに合わせた新しい働き方や生き方を確立している人がいたり。
地方・新潟の一般的なイメージを刷新するような新たな働き方や生き方は、自分で自分の人生を築く覚悟をもって、挑戦し続ける人によって毎日生み出されています。
そんな小さな新潟の変化をできる限り多く、細かく記事として取り上げることで、大きなムーヴメントを起こそうと試みています。新潟の課題や可能性に向き合い、今とこれからを面白くしていく人や生き方をどんどん発信していきます。
今回は、新潟で自分らしい自由な働き方を広げていきたいと活動する、「かっしーさん」こと鹿嶋功貴さんが主催するトークイベントに参加してきました。 ゲストは当メディアでも以前取材させていただいた江口綾さんと、WEBデザイナーの野口ひかるさん[…]
<shabell×新潟課題③>shabellキャリアで今必要な未来を与える
どこにいても、だれでも世界に向けて発信でき、さまざまな人やコミュニティと繋がりを持てるようになった現在を基準にして考えると、これから先の未来は今からでは想像が出来ないような社会や世界になっていることでしょう。
そんな未来を生きる子どもたちに必要なキャリア教育は、これまで(過去)を前提にしたものや、みんなと同じ(顕在化)を安定と考えるものから与えられるものではないはずです。
全く未知の世の中で、全く前例のない課題に対して取り組むことが、働く上でも生きる上でも求められる、そんな時代に自分らしさを確立する力を養うことが最も重要なのではなないでしょうか。
shabellキャリアでは、自治体や教育現場に対して、これからの未来に必要なキャリア教育を支援しています。
従来のように、既存の職業や企業の中から「何になりたいか」「どの企業に入りたいか」を選択させるものではなく、社会や地域コミュニティに対して、どのようにして自分が関わり、どのように自身の身の置き所を確立していくか考える力を養うことで、変化の著しい時代でも多くの人が活躍できる社会を実現します。
具体的には、shabellアプリで相談役として登録している、さまざまな知見と経験を持った職業人を講師とし、それぞれの価値観や考え方を子どもや若者が対話を通じて得られるような支援を行っています。
これにより、自分の身近な人や地域には存在していない職業に触れることができるだけでなく、働くことに関わるあらゆる視点を手に入れ、働き方も生き方も自分で選べる・創れるものであることへの気づきを与えることを目指します。
<shabell×新潟課題④>企業PRの新たな活用によって未来を創る
新潟だけでなく地方の産業経済は、首都圏のそれとは、異なる変化を遂げてきました。かつて、その地域の中では存在が大きく、経済の中心であった老舗企業も少子高齢化や都市部への人口流出によって、拡大し続けることは困難になってきました。
これは地方だけの課題ではなく、日本全体の課題でもあります。このような課題の解決のためには、いかに新しいマーケットを獲得し、その中で手数を増やすかが重要だと考えます。
PRとは、顧客とのコミュニケーションによって、企業や商品、サービスの信頼を獲得するための手段です。従来のように、大量の資金を投入することや、大量に流通させることは未来を見据えている顧客には、あまり有効ではありません。
届けるべき相手に情報や商品を届け、一人一人と丁寧に向き合っていく、そんな事業のあり方が求められています。
あらゆる地域産業や地方企業で成功事例が多く生まれている一方で、変革を起こしきれない、挑戦したいが足踏みしてしまう企業も少なくありません。
shabellは新潟のあらゆる産業や企業が、どの地域よりも先駆けて成果をあげるためのPRを請け負います。日本だけでなく、世界でも活躍するあらゆる人の知恵と技術を活用して、新潟経済が未来を自立的に創造していける状態を築くことで、新潟に人が戻り、文化が活性化するそんな試みを実現したいと思っています。
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