コミュニティスクールの実現!小見まいこさんが考える親が子どもの将来のためにできること

今回は、NPO法人みらいずworksの代表理事を務める小見まいこさんから伺った、みらいずworks創立の背景や、11年目を迎えた上での今後のビジョンを紹介していきます。
みらいずworksとは、新潟県を中心に小学校から高校までのキャリア教育を推進している、教育支援団体です。小見(こみ)さんは、どんな想いや課題を抱えてキャリア教育にたどり着いたのか、ご自身の経歴とともに掘り下げて行きます。

今の子ども達と向き合う上でのヒントがたくさん詰まっています!子どもを持つ親には、ぜひ読んでいただきたい内容です。

 

印刷会社の社員がみらいずworksを立ち上げた理由とは

ー早速ですが、小見さんがみらいずworksを設立した経緯を教えてください。

小見まいこさん:私は大学時代に、教育学部で“子どもと大人、いろんな人の学びをつくる”ということを自分の中でテーマに掲げて学んでおりました。

就職は、大学1年で出会った印刷会社に就職し、その会社が運営する研修施設のスタッフとして、自社だけでなく施設を利用する他社の新人研修やリーダー育成研修などにも携わっていました。8年ほど担当する中で、最初は希望を持って入社してきた新人でも、3年以内に辞めてしまう人がいる現実に不甲斐なさを感じていました。

入社当初に抱いていた希望を、実社会でうまく体現できなかったり、上司との関係をうまく築けなかったりするのをみて、“子どもや若者たちが過ごしている社会と実社会は分断されているのでは”と感じたんです。そして、“じゃあそこを埋めていくには、どうしたらいいのか”を模索する中で、尊敬する伊勢みゆきさんと出会い『キャリア教育』という考え方を知りました。

そこで2010年頃、私がまだ20代後半だった頃に『キャリア教育コーディネーター養成講座』を受けてさらに学びを深めました。そして、“新潟にもキャリア教育をもっと推進していきたい”と思ったのが一つの経緯です。

一方で、ちょうどその頃、他にもアクションを起こしているものがありました。
それは、ファシリテーションを学校に提案する活動です。

当時、私は地元中学生の職場体験の受け入れも担当していました。その中で、大人が働く社会で起きていることや目の前のことに無気力で無関心な中学生が、年々増えていっているような気がしたんです。そこで、こちらも体験内容などを変えてみたりして、ワークショップを開催したりしましたが、やっぱり心に響いていない。そんなモヤモヤから、「これは子ども達に原因があるのではなく、子どもを取り巻く社会環境や教育環境に原因があるのでは」と思い、そこに対して自分なりのアプローチ方法を探していました

その頃の私は、研修施設のスタッフとしての活動が広がり始めていて、『ファシリテーター型のリーダー育成』の講師として全国のいろんな企業様から招かれることが増えていたんです。そこで「大人になり、リーダーのポストについてから学ぶよりも、もっと早い子どもの段階から学んだらいいのではないか」と思いました。子どものうちから、多様な価値観を尊重しながら、自分の意見を持ち、新しい考えを生み出していくという経験を積むことで、人や社会とのつながりを豊かに築いていける子どもが育つと感じたんです

そこで、元々やっていた学校の先生を対象とした活動を前進させて、にいがたファシリテーション授業研究会というものを先生達と共に立ち上げました。内容は、月に一回ほどファシリテーションを学校に導入するための勉強会を開催するというものです。教育業界からの反響は思いのほか大きく、多くの先生方が参加してくれるようになりました。

次第に、学校の先生からさまざまな相談を受けるようになり、実際に学校や教員研修に行く機会も増えてきました。
そして、印刷会社を退社して、子ども達へのキャリア教育や教育現場のファシリテーションによる学びづくりをサポートするための、みらいずworksを立ち上げました。

ー今のお話で出てきた「ファシリテーション」とは、一体何のことなのでしょうか。

小見まいこさん:ファシリテーションとは、広い意味で言うと「人との関わりを促す考え方やその手法」のことを言います。教育の場面でのファシリテーションとは、先生の生徒達に対する“教える”ティーチング意識から、生徒達の考えを引き出して学びを深めていく意識への転換という意味を持っています。

例えば、先生達の中には一生懸命に教えれば教えるほど、子ども達の心が離れていく感覚を経験したと言う方が何人もいます。自分に興味を持ってもらえていないのかな、嫌われているのかな、などと考えて心が冷えていくように感じたりもします。

そこで、先生が心を開いて、背負っていたものをちょっと置いて、子ども達の声に心を傾けることで、人として生徒達と対峙できるようになる。そのきっかけとなるものが、ファシリテーションだと考えています。

ー学生時代からの小見さんのテーマであった“子どもと大人の学びの場をつくる”というのは、どんなことがきっかけでうまれたのでしょうか。

小見まいこさん:教育学部で子ども達と「総合的な学習の時間」で地域学習のサポートをしていた時のことがきっかけですね。

子どもはまっすぐなので、大人はいろんなリスクやしがらみを気にしてなかなか解決できないことも、子どもは案外すぐに突破していく、と言う場面をたくさん見てきました。

また、大人も「子ども達のためだったらひと肌脱ぐよ」と言って行動してくれたり、そして地域のつながりが出来上がっていって。そんな光景を目にして、「子どもを核にすることで、地域のありたい姿が見えてきたり、大人達も繋がりあっていく」と考えました。子どもって、そういう力を秘めている存在なんですよね。

そして、そのつながりがまた子どもの将来につながっていく、と考えています。

 

みらいずworksを通して見えてきた、今の保護者が抱える課題

ー現在のみらいずworksは、誰にどんな支援を届ける活動をされているのでしょうか。

小見まいこさん:みらいずworksは、子どもたちを取り巻く教育環境を総合的にサポートしています。子どもたちは、学校・地域・家庭のなかでいろんなことを学び吸収しています。みらいずworksはその3本柱のどこにも属していません。だからこそ、それらを繋ぐ存在になりたいと思って活動しています。学校で行うキャリア教育を企業と繋げたり、学校で新たに始まったキャリア教育のコンテンツである「キャリアパスポート」に関する情報をご家庭向けに発信したり。学校と地域、保護者が一緒に協働しながら子ども達の豊かな成長を支えるしくみであるコミュニティスクール*1の立ち上げを支援したりしています。

*1コミュニティ・スクールとは、学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させること〈引用:文部科学省公式HPコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/

 

ー活動を通して、どんな課題を感じていますか。

小見まいこさん:今、子ども達の学びが大きく変わろうとしているんですが、一方で保護者の考え方はあまりアップデートされていないと感じています。私たちのように昭和や平成初期に受けてきた教育と、令和の教育は大きく変わっています。親の眼差しを少しずつでも変えていくことが、子ども達が将来大きく変化する社会を生きていく上での力になると思っています。

ーこれからを生きる子どものために保護者はどんなことができるのか、今の時代は情報が溢れているので逆に道を見失ってしまうことがあります。小見さんの目線から何かアドバイスをいただきたいです。

小見まいこさん:保護者は、子どもと自分を別の人間であることを理解し、冷静に子どもの得意不得意を分析することが大事だと思います。私も母親なので気持ちは理解できるのですが、親はどうしても自分と子どもの共通点を多く見てしまいます。だから、できないことをすぐ指摘して改善させようとしたりします。また、子どもには学校のテストなどで測れる論理・数学的知能以外にも、テストでは測れない音楽・リズム知能や対人的知能など主に8つの知能があると言われています。

今までは、サーチライト型と言ってこれらを“まんべんなくできるタイプ”が優秀とされてきましたが、今はレーザーライト型と言って、光る能力をさらに突出させるべく育てていくと、子ども自身も夢中になって何かを成し遂げようとすると言われています。

だから、保護者は子どもの持つ“能力や好きなこと”をまずは見つけてあげることが重要です。見つけるためには保護者がいろんなことに挑戦して、楽しんでいる姿を見せて子どもを巻き込んであげたらいいのではないでしょうか。保護者自身が自分の人生を目一杯生きるということが大切です。

子育てに正解はありません。正しいことを教えるあまりに余裕がなくなるよりも、“自分が楽しく生きること”こそが、子どもにしてあげられる一番の教育だと思います

 

みらいずworksの次なる10年ビジョン

ー最後にみらいずworksが今後の未来に対して掲げているビジョンを教えてください。

小見まいこさん:みらいずworksは今年11年目を迎え、新たな10年をスタートさせたところです。私たちが目指しているビジョンは大きく2つあります。

1つは、自分で自分の人生を切り開いていける子ども達を育てていくことです。親や先生に言われたからやるのではなく、自分がやりたい、ワクワクすることに向かって進んでいける子どもが育つ社会を作っていきたいです。

もう1つは、自分の生まれ育った、生活している地域に愛着を持った子ども達を育てたいです。今は、どんどんグローバル化された時代です。だからこそ、自分の足元を大事にできることってすごく重要だと思います。クラスなどの周りの環境や地域社会などを変えていける、良くしていける1人なんだという認識を持てる社会にしていくことも目指しています。

そんな子ども達を育てるために、社会の多様さにたくさん触れ合ってもらって、学びを深める機会を作っていくのが、これからのみらいずworksの役割です。

***

 

今回お話を伺ったNPO法人みらいずworksの代表である小見まいこさん。

最後に語られた「保護者がまず自分の人生を楽しむ。それが子どものためにしてあげられること」という言葉がとても印象的でした。
きっとこの記事を最後まで読んでくださった子を持つ保護者、みんなに刺さったメッセージなのではないでしょうか。

親は子どものためと思ってつい、「〜しなさい」「もっと〜したらいいのに」と言ってしまいがちですよね。
しかし、小見さんの「まんべんなく出来なくていい」という言葉を信じて、親としての重荷を少しだけ下ろしてみませんか。一番大切なことは、親として我が子を信じることです。あとは、親であるご自身が先陣を切って“ワクワクすること”を探しに行きましょう。

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小見まいこさん
こみ まいこ|認定キャリア教育コーディネーター


新潟市生まれ。若者の離職やニート・フリーター等の社会問題に問題意識を持ち始め、2009年に「学校にファシリテーション、ファシリテーショングラフィックを導入するプロジェクト」を開始、その後「にいがたファシリテーション授業研究会」へと発展し、初代代表になる。同時期に「キャリア教育が日本を救う」という言葉に出会い、子どもと社会をつなぎ、子どもの自立を促すキャリア教育の支援を始める。日本の、新潟の教育と本気で向き合いたいと、2012年4月に「みらいずworks」を設立した。その後2016年にNPO法人となる。認定キャリア教育コーディネーター。文部科学省コミュニティ・スクール推進員「CSマイスター」座右の銘「自分から 自分らしく みんなとともに」

みらいずworks HP:https://miraisworks.com/